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[コメント] ボウリング・フォー・コロンバイン(2002/カナダ=米)

これは完璧な革命だ。待ち望まれていた新しい刺激だ。
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まず、この映画をストレートに、余りにも真正面から受け止めることに躊躇をしたいと思う。それは、この作品が革新的・刺激的過ぎるからだ。一歩距離を置いて接しないと、まるで自分がナチズムの宣伝に乗せられるドイツ人になってしまいそうな気がしたから。少なくとも、話題映画という「真っ当な」経路を経て自分の眼に飛び込んで来た中では初体験である。

感じた。マイケル・ムーアの手腕を。ひとことで言おう。この作品はニュース(ドキュメンタリー)の進化系である。

ニュースやドキュメンタリーとは、飽く迄もある一つの現実に対する製作者の視点/意見である。それらはあたかも中立的な、「神の視点」の如く提示されているがまかり間違っても(完全な)公平性など絶対に有り得ない。一体どれほど多くの取捨選択を経て最終的なニュースとなるというのだ? ニュース(ドキュメンタリー)には製作者の意図が必ず潜在している。そこを間違ってはならない。

「ボーリング・フォー・コロンバイン」の斬新性は、中立性など全く装わず、ハナからメッセージを高らかに掲げている点である。潔いのだ。何故本作が話題になったか? それは人々が味わったことのない映像的体験をしたからだ。ジェットコースターの如く同一的視点/意見を列挙していく勢い・スピード(←ここが本作の最大のキモなのです。重要!)はこの上ない快感だ。C・ヘストンなんか最凶の悪役といった趣である。ある意味、本作はタブーを打破しているといえる。人々は中立性に身を隠したニュースには飽き飽きしていたのだ。もっとはっきりと意見を提示してくれる演説家(扇動者かも?)を待ち侘びていたのだ。そして巧みな演説家に身を任せるのは、単純に言えば‐楽‐なことだ。思考する手間も省ける。

断っておくが、自分はマイケル・ムーアを、そしてこの作品を決して否定しているわけではない。銃問題は絶対的に忌むべきものだと最初から思っていたし、例えヤラせや偽情報が使用されていたとしても許せるぐらいのネタだ。いや、マイケル・ムーアは真摯である。作品の根底にあるシリアスさは一切疑いようもない。

ニュース(ドキュメンタリー)が犯してはならない領域を、我々は眼にしてしまった。

でも、ネタが銃問題でよかったと思う。マイケル・ムーアがアメリカ政府子飼いの映画監督だったら、妖しい宗教団体の教祖だったら・・・と想像すると怖くないですか?

(評価:★4)

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