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[コメント] ロボコン(2003/日)

スポコン青春映画を奇をてらってロボコンを題材に作ろうとしたまではよかったが、イメージだけ。ロボコン関係の友人がいるが、彼らの苦労を知ってるだけにどうしても評価は厳しくなる。
ガリガリ博士

わかってはいるのですよ、理系人間なんてまともに映画化しても一般ウケしないってことは。でもあえてロボコンを題材にするんだから、もうちょっと違うアプローチを見せてほしかった。試行錯誤して文系大学から出場を目指してる人たちもいますよ。むしろそれに目をつけたほうが面白くなったんじゃないの。

自分が在学する大学はロボコンの強豪校として知られ、優勝を含めて何度も入賞を果たしているようなところだ。しかし、彼らの環境は実に悲惨だ。業績を新聞の地方欄や学内報では大々的に報じられても、大学からの援助はほとんど無く部員の自腹。電動ドリル一本買うのも一苦労、予算会議で勝ち取らなければならない(そのとき私はといえば、自分の所属サークルの予算確保のためにライバルのを少しでも削ろうとする)。NHKの取材で東京に呼ばれても、資金難で辞退する有様だ。さらに驚くべきことに校舎内の倉庫が部室代わりだ。ロボコンクラブというものは全国放送されるような晴れ舞台がありながらも、普段は何をやってるかさえよくわからないという表裏がある特異なものなのだ。そのような劣悪な環境から全国レベルのロボットを毎年作り出す彼らの情熱には敬意を表したい。

その点、里美たちは実に恵まれている。弱小の割には部室もあるし、道具も揃ってるようだしどうやら活動資金の心配もなさそうだ(合宿代は無かったようだが)。部員不足なんて弱小サークルならばどこでも抱えてる悩みである。別に貧乏臭い雰囲気を作れというわけではなく、さわやかすぎてもなんだかダメなのだ。

気になる点はまだまだあり、たとえば監督は高専と高校の区別ができていない。一緒くたに考えている。両者は似て非なるもの。あれでは普通高校の雰囲気だ。第1ロボット部の描き方も、映画的誇張だとはいえあまりにも酷い。変な格付けや、テニスボールを拾う新入部員よろしくお茶汲みの下級生たち。体育会系のノリをそのまま文科系に持ち込んでしまった弊害であろう。文科系クラブ同士がいがみ合うのも信じられない。こういうのは体育会系クラブと文科系クラブがそのお互いの理念の違いから相容れずに仲が悪かったりするものだ。監督は体育会系の人間だった、あるいはクラブ活動にまったく興味が無かったかのどちらかではあるまいか。

肝心のストーリーはと言えば、そもそもアイデア賞で予選を勝ち残ったという設定からして胡散臭い。そのアイデアを生み出した過程はまったく描かれない。まず、なぜベルトコンベア方式なのか。そのコンセプトは何か、コンセプトを満たす最適な形がそれなのか、等々。さらに、ロボットの大きさ、質量、予算といった厳しい規定の中からその筐体を支える強度を確保しつつ必要最低限の骨組みや電源、モーターなどを選定し、かといって妥協はせずギリギリの線でそのアイデアを具現化する。コントローラをどうするのかも悩みどころなのだ。という製作過程の面白さを完全にすっ飛ばしている。それもこれも相田のせいだ。相田みたいなすかした設計担当いるわけねえ!理系人間は議論好きだ。ロボットについて徹底して議論しろ。自分の妄想を周囲にぶちまけろ。一人でかっこつけて考えんな。議論してお互いの考えをぶつけ合って、そこから理解がうまれて優勝を目指す(のは本来は主題ではないはずなんだが…)あるいは人間として成長していくという流れでもドラマは成立する。

ロボットの製作過程は描かれないし、こともあろうに里美はロボットの複雑な操作を一瞬にしてマスターししてしまう(操作の複雑さだけでなく、選手は膨大な大会ルールも把握しなければならないのだ)。操作がうまくいかずにピンチになるとか、必至に特訓した操作を思い出して立て直すとか、そういう見せ方があるだろうに。まったくもってこの映画は見せるべき点が間違っているとしか思えない。

評価したい点もある。それはロボコンを人気の華のあるサークル活動として描かなかったことだ。優勝して喜ぶのは自分たちと顧問の先生だけ。全校生徒が応援に来てたり、胴上げしたりしない。この盛り上がらなさは良い。

かつて『究極超人あ〜る』の人気により全国に光画部が出現したり教科書とあがめるようなクラブが多く登場した。では、この『ロボコン』を見て自分もロボコンに出場したい!入部したい!と思わせるような力があったのか無かったのか。その効果で部員増となったかどうか、それは各高専、大学のロボコンサークルがよくわかっているだろう。

以上の意見は大学側からの視点である。もしかしたら高専はまた事情が違うのかもしれない。その点はご容赦願いたい。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)スパルタのキツネ ぽんしゅう[*] ゆーこ and One thing[*] 水那岐[*]

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