[コメント] キル・ビル(2003/米=日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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『ブラック・レイン』は僕にとって、10本指に入るほどお気に入り映画である。こういう「日本らしくない日本」を描いた映画が、僕は好きだ。だから『キル・ビル』も予告を観たときから「これは絶対観たい!」とワクワクしていた。僕にとっては「タランティーノの新作が出た!」ということより「”日本らしくない日本”の新作が出た!」というのが楽しみだったのだ。
しかしこの映画に見られる日本らしくない日本の風景も、そして数多くの元ネタも、すでに語り尽くされているようだ。特に後者は、僕なんかよりずっと詳しい人に任せたほうがいいだろう。だからこのレビューでは話を栗山千明に絞ろう。先に言っておくが、パンチラがないからダメだという話ではない。彼女こそ予告を見たときからのもう一つの楽しみだった。そしてレビューを書くのに絶好の材料でもある。というのも、ローカルな話題だが、僕が生まれ育った地方では、彼女は、もう何年も前からJAバンクのCMキャラなのだ。テレビはもちろん、通学のために電車に乗れば、必ずと言っていいほどJAバンクのチラシがあった(最近あまり見かけなくなったけど)。そういうわけで彼女は割と身近な存在だったのだ。映画に出演しているのを見るといつも、「頑張れよ。」と一声かけたかった。
……何だか段々とファンの追っかけ日記みたいな文章になってきた。と、とにかく、彼女は気になる女優であったわけだ。あくまで、注目していただけであり、熱狂的なファンではない。「死国」も「仮面学園」もテレビ放映されるまで観なかったし、「ちょきんぎょ」なるものにも興味はなかった。
それで、彼女の顔を見る機会には恵まれていたのだが、彼女の写真はえらく当たりはずれの差が大きい。かわいいときは本当にかわいく映っているのに、別の写真では全然魅力が引き出せていなかったりする。この差はどこから生まれるのか、記憶をたどってみると彼女は髪をストレートにしているのがよく似合う。パーマは全然似合わない。そして額は出さずに、前髪を垂らしておくのがよい。ついでに言うと、彼女はまだまだ制服がよく似合う。しばらくは高校生以外の役は引き受けないほうがいいんじゃないだろうか。
だから『キル・ビル』での髪型と衣装は大正解なのである。あの制服は、『バトル・ロワイアル』の黄色のジャージよりずっとよろしい(まあ、向こうは陸上選手という原作の設定があったから仕方がないのだろうが)。「キル・ビル」は栗山千明をもっとも魅力的に描いた映画だ。ユマ・サーマンと戦う時間が短く、やられ方もあっさりしているように思えるのが残念だが、血の涙を流す死に顔は今でも目に焼き付いている。
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さて魅力的な彼女だが、『死国』から足取りを見ていると、かならずしも活躍は華々しくない。映画デビューとなった「死国」からして台詞は少なく、「バトル・ロワイアル」で千草貴子という目立つ役を得たかと思ったが、その後「キル・ビル」まで話題となるような演技を見せていない。
やっぱり彼女は女優としてはまだまだ発展途上だな思う。「キル・ビル」でも、台詞は脚本を読んでいるという感じが抜けない(ただし「バトル・ロワイアル」の場合は脚本と監督の演出に問題あり。彼女の演技力以前に、今時の中学生はこんなこと喋らんだろ、というような台詞ばかりだった)。表情も物足りない。何度も顔が映っているのに、睨むのと、たまに見せる笑顔、それにユマ・サーマンにやられたときの死に顔と、この三種類しか記憶に残らない。ルーシー・リューと一緒に廊下を歩くときも、天井に隠れたユマ・サーマンを探すときも、鉄球を振り回すときも、全部同じ顔である。『ブラック・レイン』を見たとき、松田優作演技を、ちょっとオーバーかなあと思ったのだが、今ではあれでよかったのだと思える。栗山千明もぜひあれくらい豊かな表情を持ってほしい。
……と、言った端から矛盾するようなことを言うけど、僕としては、彼女にはしばらく、狂信的な役ではなく、おとなしい役を演じてもらいたい。「死国」以来、彼女が演じてきたのは、CMで見る笑顔とは裏腹な、どこか異常な人間が多い。無理をしているようにさえ感じる。彼女は微笑んでいるときが一番かわいいよ。
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最後になったが、「キル・ビル」を見て栗山千明に魅せられた人から、「JAバンクのCMやチラシが見たい!」と頼まれても、そんなコレクションなど持っていないのでできません。悪しからず。
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