[コメント] クジラの島の少女(2002/ニュージーランド=独)
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あの爺さん。最高です。ニュージーランドにも星一徹がいたのかと思うと嬉しくなります。
おそらく、鯨にのって辿り着いたのは、爺さんのような頑固な人物ではなく、冒険心にとんだおおらかな人物だったんだと思う。爺さんがああまで頑固なのは、伝統を守ろうとする責任感からで、その危機意識が爺さんの心からゆとりを奪っていったのだろう。
そう、爺さんだって優しいんだ。息子に去られ、他家にも跡継ぎがいないと悟った爺さんの寂しげな表情は、本来のやさしさの兆候と思えた。パイが鯨にのってきた先祖を「冒険中つらかったはず」と言うのは、自分の境遇の辛さより、むしろ、そのように自分を遇している爺さんのつらさ、責任の重さを言い表しているのだろう。
パイは鯨にのる前から、その辛さ、責任の重さを十分に覚悟していた。そして、パイはクジラに乗り、新たな時代を切り開いた。
<<ラスト>>
ラストの船出のアッカンベー踊りのカッコーいいこと! 爺さんに教育された時は半ば適当にやっていた少年も先輩の踊りに見惚れていました。舟の漕ぎ手には、ドイツ帰りの父の姿、そして、女性の姿も見えます。爺さんはパイの傍ですっかりやさしい表情となっています。 最高のラストです。
<<クジラの意味するところ・・・>>
波打ち際、大海原、冒険。
「大海原」を変化の激しい「世の中」とすれば、「クジラ」は古くからの「民族」または「伝統文化」の例えと考えることができるだろう。伝統文化の時代への調和、それは「波打ち際(=瀬戸際)」に立たされた彼ら一民族にとって大きな「冒険」ともいえるが、そのヒントは(特別なものではなく)彼ら伝統文化の中にはじめから存在し、其処にしっかりと腰を据えることで、次なる世代に引き継がれていくだろう・・・、そんな作者のメッセージを感じた。
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