[コメント] 阿修羅のごとく(2003/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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父親に不倫をされた母親を哀れんで、母親に知られずに父親を改心させようとする4姉妹の姿を描いた映画。79年にドラマ化された向田邦子原作の同タイトルの作品の映画化。
セットや小道具など昭和50年代の世界観を細部に至るまで忠実に再現されていて、ドラマ作品同様に小出し小出しに食べ物を巧く利用しているところなど、ドラマ版のファンにはほぼ満足のいく仕上がりのように思う。
主役の4姉妹が母親に悟られずに不倫した父親を改心させようとする一方で、妻帯者と不倫した長女の網子、夫に浮気された次女の巻子、四女との間にわだかまりを抱える三女の滝子、夫が昏睡状態に陥ってしまう四女の咲子と4姉妹それぞれの悩みも並行して展開し、傍から観ると深刻な話なのだが、それをあえて堅苦しい雰囲気にせずにコミカルに描き、2時間を越える作品ながら飽きさせない仕上がりになっているところはなかなかいい。ラストも4姉妹のわだかまりはしっかりと解け、母親ふじのキャラも新聞の謎の投稿記事を伏線にきちんとフォローされており好感が持てる。
しかし、ドラマ版と違い、上映時間が限られるためか4姉妹の各エピソードが断続的に描かれるため、今ひとつどのエピソードも深く印象に残らないところが残念。それと四女の咲子だけエピソードが他の三人と比べると少しおざなりになってしまった印象を受ける。またドラマ版で象徴的なシーンだった巻子が夫の間違い電話で浮気を知ってしまうところも映画版となる今作では演じる黒木瞳の演技力がやや頼りないという点もあるが、インパクトに欠けた。
役者としては4姉妹の母親ふじを演じる八千草薫がやはり素晴らしい。夫の恒太郎の不倫を知りながらも平然を装って夫にも4姉妹にも優しく振る舞い、巻子が恒太郎の不倫現場でふじを見かけた際にも巻子に優しい笑みを見せてから倒れこむところなど、常に暖かみのある演技で素直に伝わってくる。出演者に関しては彼女1人がおいしいところを全てさらっていった感じがする。
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