[コメント] 座頭市(2003/日)
「緊張」と「緩和」の要素が作中に満ち満ちた作品。
非常に面白い作品でした。映画作家の北野武が持つ「緊張」の要素と、芸人であるビートたけしが持つ「緩和」の要素のバランスの取られ方が絶妙です。
どうしても比べてしまいますが、旧作である勝新太郎版の「座頭市」は、盲である座頭市が日陰の拗ね者であることが強調されたような演出がされています。しかし、今回の演出にはそういう部分は見受けられず、北野監督オリジナルの「座頭市」といった趣です。
「緊張」の代表である、血しぶきの飛び散る高速の殺陣は壮絶の一言です。普通見慣れている時代劇には鍔迫り合いのような「タメ」がありますが、この作品にはそれがなく、殺し合いの緊張感を凝縮したような感覚を味わわされます。「痛みを感じる暴力」のシーンを撮るのが得意な北野監督の技が炸裂します。本物の刀を交えての戦闘だったら、あんな簡単に人をバサバサと斬ることは不可能でしょうけど(普通、動かないまきわら一本でも集中しなきゃ斬れない)「映画的リアル」に満ちた迫力の戦闘シーンです。
主にガダルカナル・タカが受け持つ笑いの部分も、全体のリズムをこなすこともなくよいバランスで配置されています。
不満だったのは、服部の妻であるおしのの存在感がやたらと薄かったことです。旧作では市のライバルである平手造酒(天知茂)が肺病持ちであり、今回の作品では服部(ライバル)とおしの(肺病持ち)に役割が分離されてます。旧作との違いを出そうと思ったんでしょうけど、あまりそれが奏功していませんでした。
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