[コメント] ドッペルゲンガー(2003/日)
役所や柄本で驚く必要は全然ないが、ユースケの使い方を見るに付け、黒沢清の「”本当にヤバい奴”描写」の正しさに恐れ入る。劇中でほとんどキャラに笑わせることをしない黒沢演出だが、罪の意識(つまんない言葉!)とか心を統制する全てのタガが外れたような「笑い」を突如放り出すカッティングが最高。ケタケタクルクル笑う永作のコワ可愛さをはじめ、クセになる画が満載。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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「何かが抜け落ちている」という欠落感や「解放」の禍々しさは黒沢作品の屋台骨みたいなものだと思っている。その究極型が『CURE』なんだと思うが、これをコメディとして変奏したのは慧眼かと。
『CURE』の場合、人間の中にあった全てが空っぽになって「X(エックス)」に還元されるお話がサスペンスと結びついたものだということを書きましたが、これは人間の中にあったものが外に出て、本家と一悶着して、もういちど戻ってくるというお話になっている。ダークサイドと手を取り合ったり痴話喧嘩したり、って筋はいかにも現代的であるように思います。バランスを崩して「解放」されてる人間の極端さが、恐怖や笑いという極端な表現に結びつくことは自然なことかな、と。これらの全てが入り交じったラストの役所の表情がどっちつかずの実に実に変な顔であり、改めてこの役者さんは凄い人だなあ、と思う。引き出してみせる黒沢の手腕にも恐れ入りますが。
あっけらかんとした暴力描写に乗る神経症的な笑いがイカしてます(じっくり轢かれる役所と何の躊躇もなく徐行で(!)轢くユースケの対比が好き)。
劇伴もかなり邪悪。
何度も触れられていることと思いますが、「ガンッ」でも「ゴッ」でもなく「コツン」という白く乾いた打撃音を好んで用いる黒沢清は本当に本当に残忍な男だと思います。
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