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[コメント] 夏物語(1996/仏)

港への船の到着に始まり、船の出航で終わる映画。主人公の青年ガスパーを演じるメルヴィル・プポーがメッチャ可愛い。彼が、ブルターニュ地方のディナールという港町で、バカンスを過ごす約3週間のお話。主に3人の女性との関わりを描く。
ゑぎ

 一人目はクレープ屋の店員マルゴ。彼女から話しかけて来る。マルゴは『海辺のポーリーヌ』(のポーリーヌ)じゃないか。二人の散歩シーン、延々と歩きながら、会話をするシーンがとても安定した横移動の画面で気持ちがいい。ステディカムだろう。ガスパーは、恋人のレナが来るのを待っている、と云う。マルゴも彼氏がいるが、今はポリネシアにいる。ガスパーとマルゴは、あくまでも友達(話し相手)として付き合う。

 二人目は、土曜日の夜、マルゴと行ったディスコで出会うソレーヌ。マルゴがソレーヌをガスパーに引き合わせたかっこうになる。ガスパーは趣味で作曲をしていて、作った歌をソレーヌに教える。これが「海賊の娘の歌」。二人は歌の練習を通じて急接近する。ソレーヌの叔父さん夫婦らと、海上(船上)でこの歌を合唱する場面が、本作のベストショットだと思いながら見た。これは鳥肌が立つぐらい力のあるショットになっている。

 三人目が、元々ガスパーが待っていた恋人のレナ。もう来ないかと思っていた終盤になって、唐突に出現する。このレナの気まぐれで自分勝手な態度がプロットをかき回して実に効果をあげるのだ。

 仔細は省略するが、ガスパーが、(行きがかり上)ソレーヌとレナのいずれにも、ウェソン島という英仏海峡にある観光地へ行く約束をしてしまうのだが、どちらかを選ぶことができない。さらにマルゴと二人で行くことを約束してしまう、という彼の優柔不断の顛末が、プロットの焦点になっていく。誰と島へ行くのか。3人の女性と約束した状況を彼はどうやって切り抜けるのか。

 この中で、ガスパーがマルゴと島へ行く約束をすることになる場面が、後半のハイライトだろう。ガスパーがいつもの通り、マルゴに相談していると、何かスイッチが入ったように、マルゴがソレーヌのことを悪く云い出すのだ。単なる話し相手だったはずのマルゴが、ガスパーに恋をしていたことが表出する瞬間なのだ。ただし、それは、一瞬魔が差したような瞬間だ。私は「四季の物語」シリーズ4作通じて、この場面が一番ドキドキしたかも知れない。なんてスリリングな演出だろう。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ジェリー[*] けにろん[*]

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