[コメント] 修羅雪姫(1973/日)
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最近釈由美子主演作としてリメイクされた作品のオリジナルの方。本作の存在は知っていたのだが、どこのレンタルショップを探しても見つからず、半ばあきらめていたところで偶然中古ビデオ屋の店頭で発見。しかも安く…問答無用で購入を決定する。
元々釈版『修羅雪姫』(2001)を観ていて、あの寡黙で、まるで殺人マシーンのような役柄、そして時折見せる女っぽさ。
この釈版『修羅雪姫』、ハリウッドで再リメイクの話が噂されるほどだから、結構面白い作品なのだが、どうしてもちょっと足りない部分を感じてしまった。それは先にも言ったように、艶っぽさであり、業の深さの掘り下げの部分。特に最近の邦画はその辺をなるだけ回避しようとしてる傾向があるけど、かつての邦画はむしろそっちの方が主軸ではないか?と思えるほどにどろどろとした、救いようのない陰湿さに溢れていた。言ってしまえば、釈版の雪はあまりに軽すぎるのだ。ただ、これを観てるうちにどうしても一人の女優の名前を思い出してしまった。
それでオリジナルの本作だが、まさしく、その足りない部分を徹底的にまで掘り下げてくれていた。それだけで拍手!である。
そして主演は、日本ではこの役できる人はこの人しかいません!の梶芽衣子。『女囚さそり』(1972)のイメージが強くて、最初の内は日本髪にやや違和感を感じたのだが、それ以上に妖艶な演技を魅せてくれている。やっぱ雪のイメージは釈由美子なんかよりはるかに彼女の方がよく合ってるよ。っていうか、多分釈をこのイメージに合わせようとしたんだろうけどね。
話自体はややできすぎの感があるものの、話にメリハリがあるし、二代に渡る恨みの物語をこの時間よくここまで詰め込んだ。ちょっとやり過ぎとも思えるどぎつい演出も許せる。
ここで一番好きなのはやっぱりラストだな。親の恨みを晴らすため、次々と敵を血祭りにあげていく雪は、今度は恨みの連鎖で逆にその恨みを受けていく。そして最後の敵を手にかけ、傷を負いながら放心状態で雪を渡り歩く。そんな彼女に突きつけられる敵の娘による短刀…自分の人生の全てを敵討ちにかけた雪の壮烈な最期は、やはりこうでなくてはならない。あの死に方は、多分最高の満足をもって受け入れたことだろう。
…ところで、観る機会があるかどうか分からないけど、本作には続編がある。この余韻をぶちこわしにせんでくれよ!
娯楽邦画の典型的な作品だが、梶芽衣子という存在をひときわ輝かしている。
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