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[コメント] ブリッジ・オブ・スパイ(2015/米)

アメリカ人にとって、「敵国」のスパイに敵愾心を燃やすことも当然、合衆国憲法をこそ最も尊ぶ姿勢もまた否定しがたい理想像なのですね。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 もっともアベル(マーク・ライランス。米司法当局に逮捕されたソ連側スパイ)のケースでドノバン(トム・ハンクス )は最高裁で負ける訳ですが(そこも描かれる)。ただ、制作側が(ここが映画になると)着目したのは彼のその姿勢ですよね。2021年現在の状況を鑑みても、まあ、何と言うか、実話にヒントを得たと謙虚に述べてはいますが、命懸けで職務を遂行する、スパイが立派だった時代の物語と言えるのかもしれません。

 ドノバンは一種、プロフェッショナルとしての敬意みたいなものをアベルに対して抱いたのではないでしょうか。5人跳ねたら5件だろ、とは思いますが、そういう保険会社の弁護人をしていたから、というよりは、やはり戦時中、OSS(今のCIA)の顧問弁護士だったからではないか。アベルが「捕虜の待遇改善は、アメリカ側にとっても望ましいことではないか」「自分を生かしておけば、捕虜交換などの取引材料に使えるよ」などと申し出たとき、それが彼の胸に響いたのは。そんな風に描かれているように思いました。

 50年代のアメリカ社会の情景や、ベルリンの壁が建設されている光景の再現。歴史の貴重な一瞬を目撃しているような感情に浸りました。映画の中心に人物がいて、映画を構成するすべての要素がその中心に向かって組み立てられている。そんな丁寧親切な作品だったと思います。

 ちなみにソ連(USSR)の正式名はソビエト社会主義共和国連邦(Union of Soviet Socialist Republics)。今の若い人はこういう面倒くさいの覚えなくていいんだからいいね。

80/100(21/4/29見)

(評価:★4)

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