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[コメント] レスラー(2008/米=仏)

これには吃驚した。マジでビビってたじろいだ。こいつは正に“男の映画”だ。[TOHOシネマズシャンテ1/SRD]
Yasu

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







三沢光晴がリングの上に殉じた翌日に観た。

本作はプロレスにしか生きることができなかった不器用な男の物語である。しかし、これは紛れもなく“ひとりの男”の生き様を写しとったものであり、そこに女の入り込む余地はない。

例えば、キャシディ。

クライマックスで、心臓に爆弾を抱えたランディが試合に出ることを知った彼女は、会場まで彼を追いかけていく。しかし、今ならまだまともな人生に戻れる…と、試合を止めるよう説得しようとするキャシディに対してランディは「プロレスこそが俺の人生だ」と撥ね付け、そのままリングへ上がっていくのだ。

それを見届けたキャシディは、もう付き合いきれない、あるいは自分には彼を止めることはできないことを悟り、その場を立ち去る。ランディのほうも、彼女の姿が通路の奥から消えたのを確認し「やはりな…」とでも言いたげな微笑を浮かべるのである。もちろん、覚悟を決めていたランディにとって、それはむしろ望むところであっただろう。

娘との関係にしてもそうだ。これまでないがしろにしてきた娘が急に大事なものに思えてきたランディは、一時はどうにか父親らしいことをしてやるのに成功する。しかしそれも、自分自身の過ちによって全ておじゃんになってしまうのである(まあ、約束をすっぽかされた娘が半ばヒステリックになるのは少し飛躍がすぎるように感じたが)。

結局、ランディはいい父親にはなれなかったし、キャシディの良きパートナーにもなれなかった。つまるところ彼が行き着く場所は、やはりリングの上(そしておそらくは、そこで己の命を散らすこと)でしかないのだ。そこに女の甘さはまったくない。

これは人によって評価が割れるかもしれない…と観た直後には感じた。なので、ここCinemaScapeでの評価が意外に高い(本コメントを投稿した2009年7月時点で平均★4.1)ことは正直なところ意外とも思えるほどなのであるが。

(評価:★4)

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