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[コメント] マタンゴ(1963/日)

日本版ソラリスってところか。いや、向こうがソ連版マタンゴなのか。
torinoshield

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







漂流した時してはならない事に海水を飲むな、ってのがあったと記憶している。塩分がきつくて喉が渇いて悪循環になるとかなんとか。これは断食に似たものがあって目の前に減るわけがない位の水があるわけですよ。しかしそれを飲むな、と。そういう意味で漂流したら地獄なわけです。もっとも漂流経験なぞめったに出来るものではないが。

食いたい、飲みたいってのは人間の本能なわけでそこにきのこがのこのこやってくる。これは漂流した時の目の前の水ですよ。耐え切れないくらいの葛藤は当然あるわけです。それで抵抗もむなしく皆どんどんその本能に陥っていく。

この映画のポイントはこのあとだ。きのこを食って人間を捨てたとしても「死なない」んですよ。漂流で塩水を飲んだらそれは死に直結かもしれないがきのこは取りあえずきのこになるだけ。そしてそれってのはそんなに不幸せな事なのかどうかも定かではない。

つまり映画の結論としてハッピーエンドも何もあったものではないって事なわけで最後の「ほれ見ろ!これがっ」(正直過剰な演出に笑った)みたいなのは一応バットエンド風な演出なんだけどね。

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時代を垣間見るとなんとなく資本主義のバカどもが共産主義に必要以上の恐怖を叫びならが全滅する過程を描いている様にも見える。富も名声もあった人達がそこら辺の一きのこ市民ですよ。でもその先の議論として「きのこである事が悲劇なのか?」という反論を期待している風にも感じ取られる。

ただ現代ではそこら辺の思想はどうでも良い事なわけでもっと単純に人間同士の在り方として脚本がピックアップされている。それだけ普遍的なテーマなのだ。恐らく100年経とうとも人間の物欲、食欲、性欲はなくならない。マタンゴという語呂は人間の欲を上手く響きに変えているから印象に残るのだろう。ドラクエのぱふぱふするに匹敵する卑猥さである。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)moot 荒馬大介[*] kiona[*]

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