死んだ夫の帰りを駅で何度も待つ彼の祖母も、結局は彼とおなじであり、わかりあえる人間なのだ。

ラストで、風の音を録音するサンウの表情が笑顔に変わる。ヨンスとの出会いのきっかけとなった自然の「音」で、彼女との美しい思い出を信じるとともに、そんな彼女を好きになれたことを後悔しないでいれたことは想像に難くない。 悲しい恋の結末だが、その輝いた時間があったことを大切にして、彼は生きてゆくはず。

「今は酔いたくない。酔うと、彼女が待っている気がして・・」

彼女と会いたい、と強く願うが冷たくされているとき、知り合いのタクシー運転手と会話しているシーン。彼の気持ちがよくでているセリフだと思った。 桜の道の最後の別れの冗長なシーンは、おそらく観客に彼のかけめぐる胸のうちを様々に想像させる、秀逸なシーン。