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[コメント] 最前線物語(1980/米)

伝えたいことはわかった。名場面も多くとても美しい詩情もあった。でも、その詩情ゆえに戦争そのものはあまり伝わってこなかった。
tredair

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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無尽蔵に湧き出てくる葉巻の不思議や、どこの国の兵士であれ誰もが英語を話すという不思議。そして、勝利したり活躍したりするのは主役の米国兵ばかりで、かつ主要メンバーは常に助かるという不思議。

そんな細部にこだわるような映画ではないのだろうなと思いつつ、美しかったり都合がよすぎたりなシーンが登場するたびに「戦争って、兵士の日常って、こんなにロマンチックでうまくいくことが多いのかなぁ。」という疑問も頭をもたげてくる。

現実の戦争がどういうものだったのかをもう少しリアルに描いてくれたうえで、同時に「生」についてをも描きだす。といった感じにしてくれた方が、もっとよかったように思える。

とはいえ、私は戦地におもむいたことがあるわけではないので、「けっこうあんな感じでサクサクいくことも多いんだよ。」と言われれば「そうなんだ、けっこうどうにかなるもんなんだねー。」と言うしかない。でも、戦争を知らない者にそのように思わせてしまっては、もともこもないようにも思える。

個人的には、もし戦争に巻き込まれたらと考えるよりも、それ以前に戦争そのものを否定することが大事なんじゃないかと考える。こんなに争いばかりある世界で暮らしているくせに、ということを思うとあまりに青いが。

また、この映画における生の提示をもってして平和を希求させれば戦争を否定するに至るではないか、という考えもあるが、そのようなまだるっこしい三段論法じみたものでは愚かな者(つまり私のような者)には伝わりにくい。

もちろん、命や生の素晴らしさを伝えるための単なる背景としてだけは、戦争を安易にもってきてもらいたくない。が、これはそのような「単に背景に戦争をもってきただけ」の映画ではなく、かなり強いメッセージ性のある作品であると判断した。

ゆえに、そのアンバランスなところがどうも気になってしょうがなかった。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] ハム[*]

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