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[コメント] アリーテ姫(2000/日)

いきなり駆け出す赤ん坊はいない。
uyo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







DVDが出たので、改めて再見する事が出来ました。やっぱりいいですねえ。DVDの映像特典が、いわゆる「メイキング」なのですが、一つの場面が出来て行く過程を丁寧に追っていて、メイキングを見た後では、その場面を見る目も変わってくる、いかにも「アリーテ姫」らしい特典でした。

一つのものを創ってゆくためは、いきなり完成品が天から降ってくるわけではない。準備があり、過程があり、方法(ノウハウ)があり、技術と経験が用いられているのだ。つまり、誰にでも実行可能なのだ、と言う、本編に通じるテーマを感じました。

別にそれは、作る事だけではなく、人との関係だったり、商売だったり、家庭生活だったり。人生のあらゆる事に言える可能性。

自分の人生で、やれるだけの事をやっている人は、その実践が上手く行こうが行くまいが、さほど苦しんでいるようには見えない。失敗すればそれはもちろん落ち込むけれど、また何とか別の事を始めている。根っから苦しんでいるのは、ボックスのように、「何かをしようとさえ出来ない人」だ。自分で自分の人生の可能性を閉じている人が、その原因も分からずに苦しんでいたり、自分が気に入らない周りの人をも傷付けている姿を見ると、正直「あなたは自分で気がついていないだけで、自分がしたい事だったら、頑張れば出来る可能性を、その身体の中に持っているんだよ!」と教えてあげたくなります。

だって、私はその人の「苦しみ」の中に、同時に(潜在的)能力の高さも感じているから。「なにも出来ない事がつらい」と感じている、と言う事は、つまりは「何かを出来るようになりたい」と願っている心の裏返しだからだ。そしてきっと、やってみれば出来る事だから望むのだ。

自分が出来なかったり、していなかったりしていても、別につらくはない人は、そのまましあわせに人生を過ごせるのだから、まったくそれで構わない。のんびり人生は私も大好きだ。でも、辛さを抱えているならば、それこそが自分の「可能性」のきっかけだと思って、どんなことでも、したい事はなんなのだろう?と考えてみて少しずつ実際にやってみようよ、と言いたい。

「年を取れば取るほど出来る事が減ってゆく」のではなく、「経験を積めば積むほど出来る事は増えてゆく」のだ。いきなり駆け出す赤ん坊はいない。アリーテが犯したような自分を見失う失敗も、次の段階への栄養となる。

杖を一振りするだけで、何でも出てくる人生は味気ないものだと気付くだろう。

(評価:★5)

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