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[コメント] 親愛なる同志たちへ(2020/露)

娘の事があっても尚…、と思うかも知れない。しかしリューダ(ユリア=ヴィソツカヤ)にとっては出来の悪い「不肖の娘」なのだ。それでも彼女は母なのだ。彼女自身はブレていない。☆3.9点。
死ぬまでシネマ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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体制の中で保身に走る人々。主人公は積極的に自分の<役割>を果たそうと努める。父親には全てが見えているが、同時にどうしようも無い事まで見えてしまっている。

労働者達がこれでは生きて行けないと抗議の狼煙をあげても、管理者達には全く届いていない。抗議者の訴えに興味は無く、耳を傾ける必要性すら感じない。<管理>が壊れた事こそが問題であり、どう<処理>するかで頭が一杯になっている。中央から派遣された指導者までが、そうだ。

日本で言えば原発ジプシー達が舐めんじゃねぇこんな扱いされんなら全部ブチまけんぞとか言って徒党を組んだら、全国の原発に飛火したらエラい事だと慌てた現場が、上を忖度する中でヤッちまった様な事件だと思えばいいか。勿論上層部にとっても国を揺るがしかねない大事件だったに違いない。しかしそれでも尚、<何故起きたか>には蓋をする。

KGB(アンドレイ=グセフ)は躊躇無く同胞を取り締まるが、憐れな母親に同情を見せる。軍人にも善人は居ると言い、軍人がKGBを嫌うのも無理は無いと理解を示す。人間の世界には割り切れないいい加減さがあり、それがこの映画では唯一の救いになっている。

海外の映画を観ると、日本を考えてしまう。日本にも保身や忖度や<体制>の事しか考えず、国民・市民・人間の事など全く考えた事も無い官吏・公務員が山程居る。しかしそこに人間がいる限り、何処かに救いはある筈。この世界から人間を排除してはならない。

(評価:★4)

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