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[コメント] 生きものの記録(1955/日)

早坂文雄さんが病気にあっていた頃に作られた映画ということで、若干勢いを失っています。でもそんな黒澤監督が大好きです。
chokobo

何しろ「遺作」とタイトルに打ってるくらいですから思い入れも大きかったのでしょう。早坂さんと黒澤さんは大変仲の良いコンビだったらしくて、『酔いどれ天使』で会ってからかなり親しくしていたらしいですね。

この作品には音楽がほとんど存在していない。しかしどうでしょう、意図的に黒澤監督がそうしているのかもしれませんが、映画の始まりと終わり以外に音楽は出てきません。しかもその音とは恐怖をあおる恐ろしい、その後東宝でいえば怪獣映画やウルトラQなどで使われた音の原点にも思えます。

これらの音は弟子である佐藤勝さんや武満徹さんあたりに引き継がれます。それぞれフィールドは異なりますが、確かに早坂さんの影響を部分的に受け継いでいるように思えます。

映画は黒澤映画としては前作『七人の侍』で東宝側と相当な大喧嘩を繰り返しながらも大ヒットさせた関係から、双方遠慮しているということと、前段述べたように早坂さんを失ったショックからしばらく撮影が中止となるなど、ずいぶん起伏があったようです。しかし映像から出てくる迫力は相変わらずでした。

家族で話し合うシーンや、大雨の降るシーン、また最後に工場が炎上してしまうシーン、歯科医の志村喬と主人公の三船敏郎が会話するシーン、ラストの病院、そしてその病院の階段シーンなど、極めて印象に残るシーンを残しています。しかしそのひとつひとつがイマイチ勢いを失って見えるのは、やはり早坂さんを失ったことの影響がるように思えます。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)甘崎庵[*]

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