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[コメント] グラン・トリノ(2008/米)

もはや温暖化する地球を目前にして20年後にはこの映画が評価されることなどないだろう。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







クリント・イーストウッドが出演する、恐らく最後の映画となるであろうこの映画は、見事に彼の個性を生かし、尊重し、彼の我儘や思想信条、趣味などなどあらゆる要素が密封された見事な映画だったと思いますね。素晴らしい作品でした。

フォードの車は良く知りませんし、もともと車に興味がない私には、グラン・トリノがケンメリのスカイラインに見えてしまったりする程度の知識で映画を見ています。しかしマジで車が好きな人達。あるいは”アメ車”という幻想を追いかけてきた人々にとってきっとこの映画はかけがえのないものになったことでしょう。

(というキレイごとはこの辺にして・・・)

私も実は車が嫌いなわけではなくて、学生の頃付き合っていた彼女の親が乗っていた冒頭のケンメリでかなり暴走した経験もあるんです。

でもこのケンメリは、いわゆるGTRではない上、今で言うパワステでもないため、超重たいハンドル(重ステ)だったために、必要以上に腕っ節を鍛え「男の車だぜ!」(実は彼女の車なのにね)とうそぶいて強がるような思い出があります。

ところがある時(社会人になってからですが)、会社の同僚(実は今でも同じ会社におります)が、整備士の免許を持った”カーマニア”で、何を言っても車のことしか話さないというでしゃばり野郎だったので、今でもそいつとはほとんど会話しない、(口をきかない)仲なんです。

人間というのは、好意があれば同じ趣味同じ志に同調できるものなんですが、嫌いな奴と同じ趣味である自分に納得できずに、遂に”車という趣味”を投げ捨てた私だったりするわけですね。

映画と全く縁のないコメントになってしまいましたが、私にとっては車とはそういう存在なのです。(今はマーチくんに乗ってます)

さてこの映画ですが主人公が実に魅力的に描かれているのが勝利の要因でしょう。

主人公の老人(保守的)は妻を亡くし、子供孫に絶望し、朝鮮戦争を経験し、街の風紀が乱れるのを恐れ、隣人の中国人(モン族)に嫌悪する環境、これは正に、私が元々大好きだった車を嫌いになった経緯とそっくりだったりして、これがまた好感が持てる理由ですね。

そして、隣人の中国人の少年との交流により、次第に周囲の環境に対して接する自分を変化させるところが魅力的ですね。そのきっかけがグラントリノなんですね。

ラストの壮絶なシーンは”まさか”と思いつつも見事に予想せしめる展開となりましたが、いずれにせよ、この映画で死んだ主人公(クリント・イーストウッド)は間違いなく死期を自ら予測しつつ、自らの命を賭してこの映画を作ったように思えます。

最後になりますが、彼が映画の中で飼っていた犬が寂しそうにしているモンタージュがとても印象的でした。

素晴らしい作品だったと思います。

2009/12/25(自宅)

(評価:★5)

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