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[コメント] パンドラの匣(2009/日)

「やっとるかぁ」「やっとるぞぉ」というかけあいがいいね。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







太宰作品というとどうしてもネガティブで自己意識の中にスパイラルしてゆきそうな感覚がいたしますが、この作品にはとてもかわいらしさが漂いますね。いいですね。

まず「病」について考えたいんですね。

それは、この療養所に集まる患者さんがみんなそれぞれの過去をひきずっているわけですが、この病に蔓延する不思議さがとても面白かった。病がこの映画の中心なわけです。しかしこの病は決して現実的なものではなくて、他人からすればどうということもないただの病。でも当人からすると深刻な病。しかし、このように大勢が集まる中で希釈される病ですね。これが太宰的です。

そして全編を貫く「嘘」

「嘘」というと語弊があるかもしれませんが、患者と看護婦の関係の中に美妙に漂う嘘。これも個人の感情を表現する方法として評価できますよね。なかなか面白い展開だったと思います。

パンドラというと、どうしても開けてはいけないものとして封印されているものですが、この病棟で繰り広げられる不思議な世界そのものが箱の中であって、この病棟の外に出たことでパンドラが開かれる。そしてそれが現実世界とマッチしているかどうはは、また別のお話ということなんですね。

映画の冒頭で敗戦が告げられて、主人公がずっとそのトラウマを背負っているにもかかわらず、現実社会は男女の駆け引きと嘘で固められている。

これは古来からある現実なんですよね、きっと。

わたくしはこの映画の仲里依紗さんがとても素敵に写りました。

このそらぞらしいぶりっこな演技って、結構素でないとできないと思うんですね。そういう素養のある女優さんなんだろうなぁと感心してしまいました。

世間では川上未映子さんの演技に注目が集まったようですが、わたくしは仲里依紗が好きですね。

2009/11/19 自宅

(評価:★3)

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