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[コメント] 瞳の奥の秘密(2009/スペイン=アルゼンチン)

アルゼンチン映画を初めて見ました。カメラの美しさに感動してしまいました。(2011/02/12)
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ネタバレになりますが、最後の最後に、こういう展開でラブストーリーに落とし込むとは夢にも思いませんでした。確かに冒頭、駅のホームで手を振る女性の姿が印象的です。その手を振る女性を電車の最後尾で微妙な表情で見つめる男性。

これが自分を主人公とした私小説であることが、物語の進行とともにどんどんわかっているというお話。

そして、ある迷宮入りした事件をきっかけに老年に入った二人の男女が再び熱い思いを実現しようとドアを閉めるという、実に見事な演出。

長い長い謎解きの事件ものと思って見ていると、最後になってフイとつかれる思いでしたね。

死刑についての議論も印象的ですね。

この国には死刑制度がないのでしょうか?

そして被害者の遺族である妻がレイプされて死んでしまった、その夫はずっとこの凶悪犯を追い続けますね。そしてこの主人公の元検事(ベンハミン)との会話で。

「死刑はない方がいい。死刑になれば罪が償われるというのでは、残された遺族が納得しない。」

というようなセリフをこぼしますね。

この発想はやはり宗教観の違いのようなものがあるのでしょうね。

もともと死刑という制度は「仇討」的な要素があって、目には目を歯には歯をという発想。

そして儒教国日本に置き換えると、この発想がやはり「敵討」だとか「仇討」の発想になって、その延長に死刑制度があるような気がします。

しかしながら、犯人が死刑になることと、自らの手で仇討することはまるで違いますね。

このあたりが、日本が西洋文化を受け入れてしまったことによる矛盾をはらんでいるような気がします。

しかしアルゼンチンには死刑がない。

そしてこの妻を殺された遺族の夫が、実は犯人を自ら捕えて、自分の家の隠れた檻の中に監禁して罪を償わせようとしている。

こういう現実がもしあるとしたら、それはかなり加害者にとって厳しい償いになるのでしょうね。すごい発想です。

それにしてもこの映画は映像面においても素晴らしく映画的です。

主人公の元検事の表情をとらうるショットにしても、このカメラの寄り方が実にうまいんですよね。

感心して見てしまいました。

2011/02/12 自宅

(評価:★5)

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