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[コメント] BIUTIFUL ビューティフル(2010/メキシコ=スペイン)

相変わらず救いがない。(2012/2/7)
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







双極性障害。

いわゆる躁鬱。

主人公の妻が苛まれる病気。

欧米に多く日本に少ないらしい。 それは、人種のストレスが無いからだそうだ。

バルセロナもまるで印象が異なる。 陽光煌めくリゾートのバルセロナではない。そこには人種と偏見が渦巻く狂気が存在する。

セネガル人と中国人。アレサンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥの作品に共通する多様性。それは、生態系を破壊する人類を諫めようとする真摯な姿勢。しかしこれは神話であり悲劇だ。

生きる場所を失った人々。そんな底辺のバルセロナを映し出す悲劇。

ベビーシッターだった中国人の少女の死は最も悲しい。

余命幾ばくもない主人公の時間は刻々と失われてゆく。

彼は懺悔する。

救いがない。許しもない。命も残り少ない。街は歪む。

もはや世界はこの泥沼から抜け出せないのだろうか?

それでも主人公のウズバルは子供たちの前で父親らしく務める。子供たちと自分の父親の話をする。しかし彼は自分の父親の記憶がない。

家族の経験がなく、世に放たれた者は、人種と偏見の街で双極性障害を自覚するのだ。それは自分だ。

天井に這う何か。正に双極性障害の自分。死にゆく自分との対比。

冒頭のシーンに戻る。

海の音、風の音。

そうか、あれは自分自身だったんだ。若き日の自分。雪の木立で出会った自分。

なんと美しい。見事だ。

(評価:★4)

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