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[コメント] 少女の髪どめ(2001/イラン)

「喜捨」という行為(05・9・01)
山本美容室

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 青年は少女に恋をしたのではなく神に近い畏れを抱いたのだ。ラストシーンを見れば分かる。それは「神のご加護あれ」という言葉が日常に溶け込んでいるイスラム文化圏であれば不思議ではない。青年は少女の中に「聖なる物」つまり「神」を見出したのだ。それを象徴する髪どめ。ラストでふわっと少女の顔にかけられるベール。神様の顔をまともに見られない青年。

 イスラム世界では女性が大切に扱われているのではないだろうか。アフガン難民は女性が肉体労働をしている。イラン人の青年にはそれがショックだったのだ。川から岩を取り除く作業中に少女が転倒するシーンがある。建設現場で意地悪をした罪悪感も青年を苦しめたのだろう。それが青年を見返りを求めない「喜捨」へ駆りたてたのだと思う。

 映画的にも大変優れた作品だ。マジッド・マジディは『運動靴と赤い金魚』でも「走る」という人間の一番美しい動きをキャメラに収めていたが本作でも同様だ。映画とは無関係だが主人公の少女は「卓球の愛ちゃん」と似て蝶だと思う。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ぽんしゅう[*] プロキオン14[*] ボイス母[*]

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