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[コメント] IZO(2004/日)

いま一度殺害されるために、そして
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







いま一度生まれ出づるために、無明の闇を彷徨う魂の呻き。

****

三池崇はやはり天才で、飛び抜けて強烈なシーン(*1)、鳥肌モノの演技演出(*2)も在る事は在ったのだが、如何せん武知鎮典の脚本が平板過ぎ、二時間半の長丁場の中で、同じような場面、同じような台詞が延々と繰り返されているだけ(*3)の、散漫で退屈な映画、との印象が拭い切れない。

この物語の面白さは、その特異な設定、草案の時点で全て出尽くしてしまっていて、起承転結の面白みも、心理描写の深みも、記憶に刻み付けられるような名台詞も何もないから、友人の家で友人のプレイするTVゲームを横から眺めているような、そんな虚しさしか後には残らない。

存在と虚無とアナーキズム(テロリズム)に関する目新しいところのない、青臭い禅問答を、厳めしい古語に翻訳することで、それらしく聞こえさせようというのは、オタク向け深夜アニメの常套手段で陳腐だし、その延長線上で考案されたと思しき怨霊IZOの衣装造型からは、一片のセンスすら感じ取れない。とにもかくにも、マジかシャレ(*4)か、物語か非物語かの線引きをもっとハッキリさせるべきだ。全てが余りに中途半端過ぎるし、突き抜けた何かってのが本当に無い。(最期も良く出来た清順のモノマネといった感じ)

友川かずきを本人(の怨霊)として登場させよう、というのはどちらの発案か判らないが、これは巧くいっていたと思う。というか、彼がいなければ俺は爆睡していたかも知れない。高田渡といい、あの時代を生きた人は実に良い歳の取り方をしている。

オールスタースーパーカルト映画の惹句を鵜呑みにし、かなりの期待を抱いて見に行っただけに、とても残念な仕上がりだ。いや嫌な予感はあったのだ。映画館でポスターを良く観たときに。スーパーバイザー奥山和由。映画が始まったときに。チーム・オクヤマ。奥山和由はいつも悪い意味で期待を裏切らない。

*1・・・具体的には、IZOの流血をワイパーが拭い取るシーン。ボブ・サップの数珠が瓦解するシーン。など。

*2・・・傷害歴の在ることで有名な中山一也をIZOに、という配役センスは素晴らしい。実際、彼は良く演じていて、三木良介(彼もまた素晴らしい。リアル土佐弁ひっくり返しには鳥肌が立った)演じる武市半平太の訓戒を、犬のような笑顔で聞きほれるシーンからは、常人離れしたものを感じた。桃井かおりも恐ろしく巧い。内田裕也大滝秀治の存在感も流石だ。

*3・・・『呪怨』の恐怖シーン連発と、この映画のバイオレンスシーン連発と、一体何が違うというのか。違わない。ショックシーンを繋げただけでは、真のカタルシスも恐怖も生まれない。

*4・・・IZOと位相って、あれ単なるダジャレですよね?

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さて、本作に第一線浮上を賭けたであろう脚本家・武知鎮典の、無明彷徨はまだまだ当分、続きそうである。そんなアンタにこの言葉を。God Breath You!

(評価:★2)

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