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[コメント] ザ・ロイヤル・テネンバウムズ(2001/米)

笑えないしお洒落じゃないし独創性に欠けるし全然駄目な「なんちゃって」映画。個人的にこういう映画には厳しく接せねばという心構えでいるのだが
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







憎みきれない魅力があるのも確か。

まず、アメリカ人は(も)本当に「モラトリアム」と「自己再生」が好きだなぁ、と飽きれた。そして惹かれた。

ジーン・ハックマンもビル・マーレイもダニー・グローバーもいい歳のとり方をしている。これには素直に憧れる。

問題はたくさんある。ジョン・アーヴィングの『ホテル・ニューハンプシャー』に酷似した家族の職業設定が後半のストーリにあまり活かされていない。ベン・スティーラーの元実業家、ルーク・ウィルソンのテニス選手は兎も角、グウィネス・バルトロウの元天才劇作家(←これがモロパクリ)と母親アンジェリカ・ヒューストンの女流考古学者はなんの為の設定だったのか。グウィネスの場合、養女であること、その緊張感から喫煙を隠していること、同じ理由で性欲過多であることは一環性をもって痛い程伝わってきたが、元天才劇作家の片鱗は全く見受けられなかった。アンジェリカの場合はもっと酷い。考古学者はビル・マーレイが穴に落ちるためだけの設定であった。阿呆か。

構図がわざとらしく鼻につく。特にオーウェン・ウィルソンのナンパ小説家とルークの次男の、2枚の絵をバックに使った切り返しなんかは鳥肌ものです。またフィクス(固定)を多用してシュールな笑いを標榜した意気は汲むが、このお陰でテネンバウム大邸宅内の空間的広がりや繋がりを感じることが全然出来ず映画を観てるって気が激しく薄れた。

音楽は・・・勿論、モロ好みである。いや、冒頭のインストアレンジの「ヘイ・ジュード」はスーパーかコンビニに居る気がして悪寒がしたが、グウィネス嬢がバスから降りるシーンで掛かるニコの曲(*後半でもう一曲掛かるが最初の方。こっちの曲名は判りません。)が妙にはまってて意味不明の開放感を感じてしまった。それとルーク・ウィルソンが自殺を図ったシーンで掛かるのは、あれはやはり曲名は判らないのだがニック・ドレイクのように聞こえた。ニック・ドレイクは若くして自殺を果たしたイギリスの天才(*の中の天才。嘘だと思うなら彼の残した三枚のアルバムを聞いてといい。)フォーク・シンガーである。テントの中で掛かる「ルビー・チューズデイ」は個人的に最も好きなストーンズ・ナンバーの一つです。そして最期に掛かるのが、うん、知ってる人は知っているヴァン・モリソンの「エブリデイ」。アルバム「ムーンダンス」は名曲の宝庫だがその中からこれを選ぶところがニクイと思った。当時のヴァンらしい前向きな歌詩は作品テーマに合致していたと思う。グッときちゃったよ。

この監督、前作(かどうか知らないが)でピート・タウンジェントと共演している人だったのですね。どうりで趣味が合うと思ったら。選曲はばっちりなのであとは演出力を磨きましょうね。あと脚本は細部描写ばかりでなくもう少し気の効いたオチを考えようね。ダニー・グローバーがハックマンを追い出す件の無防備さなんて目も当てられませんでしたよ!

(評価:★3)

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