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[コメント] 小さな中国のお針子(2002/仏=中国)

モーツァルトの「毛主席を想って」!!・・・ぷ!ヤマダ君、ルオに座布団1枚ね!
Shrewd Fellow

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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フランス映画だし、全編フランス語かと思いきや、全編訛満載(マーとルオがそういってたから訛っているんだと思う)の中国語で安心。どのくらいナマっているのかはわからないけれど、後半のマーとルオ、ルオの奥さんとかの中国語とは違うので、そのへんの指導はちゃんとしていたらしい。まず、そこが気に入った!

それに、ものすごく丁寧な撮影。光と影のコントラストや、お針子の肌のうぶげの1本1本の陰影までみえるようなキレイなカットの連続に、うっとり。鳳凰山の風景の美しさ、厳しさ。村長さんも村の人たちもみんな美しい。きっと俳優さんなのであろうが、ホントにあそこの村長なんだろうかと思わせる臨場感。土、空気、空、そして水。木々の緑。太陽の日差し、雨のムシムシした感じ。それに音も。鳳凰山でのシーンにはほとんど音楽はなくて、木の葉のざわめきや、水の流れ、水牛が土を耕す音、ハエのブンブンいう音がBGM。このハエのブンブン音がすばらしくいいのです。自然の美しさ、そこで1日1日を潔く生きる人たちの美しさを丁寧に撮っていると思いました。

それなのに!最後、ミシンと香水が水没する肝心のシーンで、まるでphotoshopでスポイト&100%塗りつぶしツールでも実行したかのような、黄土色の水はいったいナンなんだ!もう、ガックシだよー。この後の水玉イメージはよかったのに。いったいあのカットだけ、どうしてあんなにお金がかかってないの?マーとルオには、大事なシーンだったのに!?ほんの30秒ほどのカットだったけど、☆が1つ減るのには十分すぎるくらい不出来だったんだよー!あー、もったいない。

お針子、洞口依子くらいの存在感がほしかったな。『タンポポ』の洞口さんくらい。そんなもんだから、彼女が山を出ていくシーンににいまいち迫力が感じられなかったように思いました。もっと凛とした感じがほしい。彼女を変えたものはバルザックでもルオでもなく、苦い経験とボヴァリー夫人だったかもしれない。私もオンナだから、なんとなくそんな気がする。中絶や流産を経験すると、お針子のセリフにあるように「自分じゃないみたい」になるものだ。自分の中から、何かゴッソリそぎ取られたような感覚。髪もバッサリ切りたくもなるサ。結局彼女はルオに話してないワケだし、こういうことって相手のオトコとはあんまり関係ないんだよね。自分としてどうか、という問題だから。だから、多分マーとルオはノスタルジックなまま水に沈めていけるのだろうなあ。甘いなあ。お針子が、あの時代、都会でたった一人でどうやって生きてきたか。それを想像するとき、この違いはいったいナンなんだろうと思う。「無知から救う」とか言っちゃって、スゲー無責任なことしたんじゃねーの?そういうことにも気づかず、「愛し方が違ってた」とかいっておセンチな気分にひたっちゃってサ。現代、彼女がどうしているかはこの映画では語られていないけど、鳳凰山に帰ってこないところを見ると、未だ自分自身に決着をつけてないのかもしれない。フランスに留学してた、などという人生とはぜんぜん違うなあ。彼らには甘い青春の思い出の地だけど、彼女には・・・どうなんだろ。男にとって甘いだけのラストにも不満でした。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ぽんしゅう[*] トシ[*] peaceful*evening[*]

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