コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 生きものの記録(1955/日)

まじめな映画だと思うがつまらない。大仰なタイトルを冠したわりには、喜一(三船敏郎)の恐怖心が一向に共有できず始めから終わりまでもどかしさがつきまとう。それは、核兵器が何故恐ろしいかという本当の理由に、黒澤が触れていないからだろう。
ぽんしゅう

本当は核兵器そのものが、恐ろしいわけではない。核兵器を開発したのは人間であり、それを威嚇の材料に使い、いざというときに発射ボタンを押すかもしれないのも人間であり、それによって大量に殺戮されるのも私達人間である。

理性的にふるまっているように見えながら、まったく非合理的な行動をとってしまう人間という「生きもの」が核を兵器として持ってしまったこと。すなわち核の恐ろしさは、人間の誰しもが持っているかも知れない愚かさに対する恐怖心に他ならない。

そのことを避けて、いくら怖い怖いと叫んでみても観客は喜一(三船敏郎)の家族と同じようにポカンと呆れるだけか、せいぜい原田(志村喬)程度の漠然とした不安にかられるだけだ。人間が一番だめな生きもので、最も恐ろしい存在だ、などと言わないのがヒューマニスト黒澤の真骨頂なのかもしれないが。

(評価:★2)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)づん[*] 煽尼采[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。