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[コメント] 釣りバカ日誌19 ようこそ!鈴木建設御一行様(2008/日)

笑いの元が単線。コメディー要素を西田敏行ひとりに負わせるのは、いくらなんでも酷。喜劇としての爆発力など期待すべくもないが、会社物語としの働く者たちの思いや哀愁が描けなくなってしまっているのは、やはりシリーズの思想が世相とずれてしまったせいだろう。
ぽんしゅう

作中で、休むことが即減収につながる船頭の八(中本賢)が、浜崎(西田敏行)に向かって「釣りばかりしていて、その合間に仕事をしているようなお前に、ちゃんと給料を払ってくれる大会社はありがたいな」と嫌味をいう場面がある。シリーズ開始当時のバブル経済期であれば、この台詞は経済優先主義や、仕事礼賛の風潮に対しての喜劇的風刺としての感情を反映していたであろう。

しかし、今回は派遣や非正規雇用といった働き方の不安定さの問題が作品のベースになっており、それを前提にしたとき、「釣りばかりしていても、ちゃんと給料を払ってくれる会社はありがたい」という指摘は、もはや喜劇的風刺などではなく、現在では働く者たちの悲劇的怨嗟にしか聞こえないのである。

鈴木社長(三國連太郎)を前にして、前出の台詞は浜崎に投げかけられるのであるが、浜崎は何も応えることなく、ただうなずき笑っているだけであった。その受け答えのちぐはぐさに、我々は制作サイドとの感情のずれを察知する。これこそが、シリーズ当初の主題と今という世相とのずれであり、シリーズの役割の終焉をはっきりと感じさせた。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)FreeSize 死ぬまでシネマ[*]

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