[コメント] せかいのおきく(2023/日)
武家社会が行き詰まり身分制度にほころびが生じ始めている江戸末期。知らず知らずのうちに時代が動いているのだ。暮らしという日々の円環に閉じられている彼らの生活は、もうすぐ外の世界の循環の輪とつながろうとしているのだ。そんな「大事」を彼らは知る由もない。
モノクロの世界に一瞬浮かぶカラーの情景もまた、そんな時代の"胎動"の暗喩のようだ。最初のカラーショットは、おきく(黒木華)の着物だ。下世話な庶民色に染まってしまった彼女の言動と、武家娘らしい淡く上品な着物の色合いがギャップとなって鮮烈な印象を残す。
おきく(黒木華)や中次(寛一郎)や矢亮(池松壮亮)が「世界の循環の輪」をはっきりと意識するのはもっと先のことだろう。年老いてからかもしれない。世界自体が回転するように動き出すモノクロのラストシーンがそう示唆している。時代の「青春」はやっと始まったのだ。どんな色がつくのかこれから決まるのだ。
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