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[コメント] 親愛なる日記(1994/仏=伊)

ヒステリックにわめくモレッティも恐いけどラストの冷ややかな目線にぞっとする。
kaki

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







第1章:「ベスパに乗って」 ローマの町をふらふらと徘徊するモレッティ。生活感のあるローマが魅力的だし、ところどころ舗装しなおして段々になった路面すら愛おしく見えてくる。モレッティは相変わらず唐突にそしてヒステリックに怒り出すが天気のいいローマの町中では、それすらも心地よい。ここでの彼の怒りは自分自信そして映画界を取り巻く現状に向いている。正論をいかにも分けの分からない事をしゃべっているように語り、ジェニファー・ビールスに「ほとんどバカ」とい言わせ自嘲気味に笑う。

第2章:「島めぐり」 友人とシチリアの島々を巡り、どこにいっても仕事が頭から離れない自分(仕事といっても日記を書く事?)、テレビが頭から離れなくなった友人、その島々が抱える問題を客観的に紹介していく。観ている方もうんざりしていくがどんどん肩を落としていくモレッティがおかしい。

第3章:「医者めぐり」 突然の皮膚の痒みに襲われ実際に彼が経験した苦渋の日々を紹介している。これは個人的に強烈だった。仕事柄どうしてもモレッティの視線と逆の立場で観てしまった。高名な医師達が彼の病気を発見できず精神的なものだとかアレルギーで片付けてしまうくだりはもちろん医師の資質に対する批判だが診断を下し自信満々に治療法を説明する医師達の正確な描写が身につまされる。最後に肺がんの診断をし余命数カ月と診断した医師さえも誤診だったところが笑うに笑えない。ずっとこの章はいつものヒステリックさが全くなく静かに進んでいく、それだけに恐い。ラストの水を飲みながらの何ともいいがたいカメラ目線は実際に彼を診察した罪に問われない大罪をおかした医師達に向けられており、それがもし自分だったらと思うとゾッとする。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)けにろん[*] White Gallery mize[*]

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