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[コメント] マラソン(2005/韓国)

お涙頂戴の障害者ものと思うととんでもない。綿密に作り込んだ佳作。所詮映画はつくりもの。その手腕に拍手をおくりたい。
ぱーこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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特筆すべきは主人公チョ・スンウの演技力である。レインマンのダスティン・ホフマン、ギルバート・ギレイプのディカプリオに匹敵する。自閉症が文化的(発達的)要因よりは身体的な脳の障害要因が強いことは、アメリカ、韓国、と文化の違う国の映画を見るとよくわかる。日本ではこれほどの演技を見たことはない。韓国語の発音が自閉症のたよりさなをよく表現しているのも新しい発見だった。

映画はこの主人公を中心にすると見せかけて、実は母親の物語であるところがうまい。「息子が死んだ1日後に自分が死ぬ」ことをこういう状況に置かれた母親は1度は考えるだろうからだ。私も同じ内容の言葉をそういう立場のお母さんから聞いたことがある。マラソンを通した息子の自立もラストの「家に帰ろう」の台詞で母親を突き放したものにしていない。そういうバランス感覚も好感を持った。

ラストのスマイルは、それまで完璧な演技を見せていたチョ・スンウが最後に健常者に戻る。あの笑顔は自閉症者のそれではないからだ。私としては残念なような、やはりそうだよな、と納得させられたような微妙な感想である。「ウォンの足は」「百万ドルの足」の台詞に見られるように、障害者ネタも十分練り込まれていて、不快感がないのもこの映画の良質なところである。韓国映画の実力はほんものだと思った。

(評価:★4)

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