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[コメント] イニシェリン島の精霊(2022/英)

寓意性のつよい映画。この映画から何を読み取るか、その任せてもらい具合が妙に心地良い。画面の美しさに反して奇妙な印象をもたらすヘンな映画である。見終わったあとで細部のエピソードをなんとなく思いだしてニヤつくしかない。
ぱーこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







初めのパブに誘いに行くところから企みたっぷりの画面。緩やかな坂を降りて湖を背景にした一軒家。何でもない描写だが後で思いだすと男はもう心を決めているんだ。くだらないな話をして貴重な人生の時間を潰すわけにはいかない。ラッパの目立つ蓄音機とか室内の日本のお面なんか写して、電気のない家なんだ。何が起こっても不思議じゃない。

カラーのはずだが白黒としか思い出せない画面に映し出される人物がまた曲者揃いだ。美人なのに頑なな妹。俗物神父。八の字眉毛で困り果てている表情のコリンファレル。純朴痴呆な問題児。頑固で愚かな権力者の父親は自分が法律の警官。噂話が生きがいの商店のおばさん。窓から中を覗き込む馬。はさみを咥えて持ち去る犬。室内に入ってくるロバがかわいい。鳥が緩やかに飛んでいた気がするが定かではない。分かれ道に立つマリア像。どことなくにやついているバーテン。ここまでくると画面からの刺激で自分の中から出てくる想像を見ているみたいだ。まことに喚起力の強い映画だ。

たとえば、これじゃ、戦争はいつまでたっても終わらないわけだ、と鈍い衝撃とともに思いました。他にも色々と、、、、

(評価:★4)

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