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[コメント] ヨコハマメリー(2005/日)

「あの時代」を生き抜いてきた人達の言葉の積み重ねが、作り手を「ヨコハマ」に引き込んでいく。そしてその作品に触れる観客もまた「ヨコハマ」を垣間見る。今はない、しかし確実にあった「たくさんのメリーさんが居たヨコハマ」を。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







自分はかなりの高確率でメリーさんと遭遇した。

70年代終わりから80年代の中ごろ、よく伊勢佐木町で見かけたメリーさんは、背筋のピンとした、そして触れがたいオーラを身にまとった人だった。白塗りは「仮面」であり、その「仮面」ゆえにメリーさんとして街に存在できる。そんな彼女の在り方は、潔くもあり、淋しくもあったように思う。

もともとはシャンソン歌手・元次郎さんのドキュメンタリーであったためか、前半はメリーさんの姿が朧気にしか観客に伝わらない。しかし、様々な「証言」を積み重ねていくうちに元次郎さんを通してメリーさんが浮き彫りにされていく。元次郎さんが歌うシャンソンに、彼の生き様とメリーさんの生き様、そしてその他たくさんの「語られなかったメリーさん(元次郎さん)」を見て取ったとき、涙を禁じ得なかった。

メリーさんが「ヨコハマ」を去った頃、「ヨコハマ」も次第に姿を変えていった。

現在の横浜伊勢佐木町を歩く、五大路子扮するメリーさんの姿。 しかし、その街はやはりかつての「ヨコハマ」ではなく、当然ながら「メリーさん」もそこにはいなかった。 「メリーさんが居たヨコハマ」が確実に過ぎ去っていたことを、はからずも思い知らされた終盤の映像だった。それだけに、あの猥雑とした、様々な人たちの涙と汗と喜びとが交錯する「ヨコハマ」が一層愛おしいのだ。

(評価:★4)

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