コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ドリームチャイルド(1985/英)

不思議の国のアリス』が愛読書の自分としては、これはちょっと複雑。あの裏話は、ルイス・キャロル側から描いた方が断然面白い。(以下、映画からはずれた話)
mize

 出版後はロリコンと思われて(多分そうだけど)、実在のアリスの親が彼女に会わせてくれなかった。

 口下手な数学教師が、同僚の娘3人(その末娘がアリス)と遊ぶときは自作の話をよどみなくしゃべれた。そしてある日ボート上で彼女たちにせがまれてアドリブで作ったのが「不思議の国のアリス」。可愛いアリスに「今のを本にして下さい」と言われて本当に出版しちゃった不器用な中年の悲哀(?)。少女の裸体を当時はまだ珍しいカメラで何枚も撮った男。後で焼き捨てたので数枚しか現存してないが、焼き捨てたとき何があったのだろうか。

 続編『鏡の国のアリス』でアリスを優しくガードする老騎士として自らを登場させた。でも落馬してばかりで結局アリスに助けられてばかりいた。それでも摩訶不思議な世界で彼の存在はアリスにとってひとときの安らぎになった。それがキャロルの切なくもささやかな願望なのだろう。

 「あの輝ける午後」と彼が描写したボートでの一日は、実は後の研究によると愚天だったらしい。でも不器用で臆病な数学教師がはじめて彼女になにかをしてやれる喜びを感じたあの日は、輝くような晴天の午後として生涯彼の記憶に残った。多分あの日から彼の人生は自分でも思ってもみないほどグングン広がっていくように感じたのだろう。しかし本が出たとたん、それは夢のように消えてしまった。

 ヴィクトリア女王に「あなたの新作を読みたいわ」と言われ、素直に数学の専門書を送った男。生涯独身だった男。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)YO--CHAN[*] ルッコラ

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。