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[コメント] 蜘蛛巣城(1957/日)

人生は迷路。今も昔も人は皆、囚われの身なのかもしれない。
スパルタのキツネ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







甲冑姿で濃霧の中を行ったり来たり。かつての武士の忠誠心と虚栄心を象徴しているかのようだった。

本作で特に感じたこと。それは、現存の城跡で、本作の蜘蛛巣城跡のような(城跡らしい)ものは少ないことだ。皮肉なことに、戦後(特に本作が製作された頃)、復興の象徴として各自治体こぞって現代的に作り変えてしまった。城址には(いまや殆どの日本の城につき物の)桜などいらないし、鉄筋コンクリートの天守も要らない。

冒頭とラストで登場する蜘蛛巣城址を思い出してほしい。「蜘蛛巣城址」の標識に、土掘りと館跡(主柱の跡)のみで何とも物寂しげではないですか!城跡に必要なのは泡沫の夢の跡。そんな細かいところに黒澤監督の城址開発に対するメッセージを感じた。

余談ですが、城廻りが趣味の私として、今までで訪れて最も感動した城址は、琵琶湖沿いの小谷城址(信長に攻め滅ぼされた浅井家の本城)です。山全体が城郭だったこの城址は、落城の状態のまま、殆ど後世の手が加わることなく残ってます。このため、天守跡まで行くにも草木の生い茂る獣道のようなところを通らないといけません。山頂の崩れた石垣そばから眺める街の景色は格別でした。これぞ城址ですね。是非一度訪れてください。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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