[コメント] 兵隊やくざ 殴り込み(1967/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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前作『兵隊やくざ 俺にまかせろ』で軍隊での最下層である「一兵卒」という設定から「日本軍兵士」に変化した大宮一等兵だった。繰り返すが、これまでの大宮と有田は悪辣な上官に対しての「ただの兵隊」であり、慰安所の気のいい女たちから見ての「兵隊さん」であったのだ。
それがゲリラ相手に派手な銃撃戦を展開し、シリーズの根幹だと(俺は)信じて疑わない反軍思想もどこかの吹っ飛んでしまった。そしてさらに本作では正規の八路軍を相手にたった独り戦いを挑む歴戦の勇士になっていた。
しかも軍隊の象徴である「軍旗」の奪還というあまりにもポジティブな行為をやってのけるのだ。数々の脱走を繰り返し、軍隊の規律なんかとは対極にあった彼が部隊の英雄となるソノ皮肉。だが、映画はそれを皮肉ともコメディとも描かずに普通に英雄譚として描く。これまでのシリーズで描き切ってきた反軍思想に何ら責任をとる姿勢も見せずに大宮一等兵をアクションヒーローとしてのみ描いた。「日本軍兵士」からさらに「皇軍兵士」へ昇華していく兵隊やくざ。
あの大宮一等兵がボロボロになった軍旗を奪還し帰還するシーンの奇妙な居心地の悪さはどうだ?部隊長があの大宮に捧げ銃をし出迎える違和感。そして軍旗を捧げ先頭を行進する兵隊やくざ。そりゃ、一種の爽快感がある事は否めない。ただなぁ、ただなぁ
もちろんその後は上官たちをぶん殴り、いつもの大宮と有田らしさをみせるのだが、如何せんそれは付け刃にしか過ぎない。シリーズも後半になるとこういったシナリオの枯渇はシリーズ自体を貶めることになりやしないか?それが心配なのです・・・
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