[コメント] 大停電の夜に(2005/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
1,各エピソードの「起」が連続するオープニング。通常ならば混乱してしまうであろうオープニングだが、各エピソード毎に出演者の名がクレジットされた。本編であるようでいて本編でない。複数を同時並列で描くという映画にとって最も困難な事を、本編開始前という「微妙」な構成で展開してみせた。
結局は同じ事なのだろうが、タイトル前に複数のエピソードが存在するという告知は、観る者に本作を「整理」させるに充分であった。
2,各エピソードは小振りではあるが、その凝縮された密度は演技者たちの上手も相まって堪能できた。それぞれが上質であり、私にとってはあのキャンドルに飾られた素敵なBARに座っているかのような居心地だった。
しかも各エピソードが絡み合っていくにつれ、いったい物語をどのような落とし所に持っていくのだろうかと興味と不安が交錯する。各エピソードが触れ合ってしまったらドロドロの愛憎劇に発展してしまうだろう。そんな展開はこのスタイリッシュな映画には似合わない。結果、触れそうで触れないというオチ。「逃げ」とも思えるし、「物足りない」とも思う。だけども、これは「大人な映画」という事でスタイリッシュに終わりにするのが正解だったと思います。
単なる「尻切れトンボ」ではなく、観る者に今後の展開を想像させる「余韻」としての「物足りなさ」は心地良ささえ感じます。
3,撮影の見事さは言うに及ばず、小物・大道具に至る監督のこだわりは従来の邦画には無かったような感覚を覚えた。
美しいだけだった前作『東京タワー』に失望感が大きかっただけに今後の活躍が期待できると思いました。
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