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[コメント] 少年時代(1990/日)

自民党政争史を思わせる壮絶な闘い。そして誰しもが必ずかつての自分を見つけられる。思い出したくない自分を見せられるが故に胸が押しつぶされる。帰りたいが帰りたくない日々。
sawa:38

3人集まれば必ずや派閥が出来るらしい。学校でご近所で会社で、それは国際政治の舞台でも当てはまる。

限定された空間で人々は様々なスタンスで生きていく。この作品で描かれる少年たちも様々な背景を背負い、独自のスタンスで生きているはずである。

だが、実社会も本作も彼等を冷徹に分類してしまっている。派閥を率いる者と率いられる者。覇権を狙う者と追従する事に安堵する者。そして是非はともかく独自性を保とうとあがく者。

本作を見て、得も知れぬ不安感とともに心の襞を掻き毟られるような、胸が押しつぶされるような「嫌な」感覚に襲われる観客が多いという。それは我々があの少年たちのようにいずれかに分類されていた過去があるからだろう。

順風満帆の少年時代を過ごしたと自負出来る過去があるならばともかく、人はどこかしら傷がある。傷はかさぶたになり、やがて消えていく、だが歳をとって単なる肌のシミのようになってしまっていた傷跡をはっきりと「傷」だと思い出させる、そんな「嫌な」作品である。

小学校5年のあの頃、自分はどのポジションにいたのか。中学ではどこにいたのか。高校では・・・そして社会に出た現在では・・・私は何をして、そして何をしなかったのか。

自制の効かない少年という「凶暴な時代」。時代は変わっても繰り返される「イジメの構図」。掘り返された忌まわしい過去に動揺しつつも、ラストのガキ大将タケシの全力疾走に救われる。思い出ははかなくも美しかったのだと救われる。少なくとも私はそう思いたい。そうでなければ、やりきれない。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)シーチキン[*] はしぼそがらす[*]

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