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[コメント] キッズ・リターン Kids Return(1996/日)

北野武監督は作品との距離の取り方が絶妙に上手い。
フライヤー1号

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画は、人が成長していく上で突き当たる問題を非常にわかりやすく描いている。しかし、そこに教訓めいたものはない。 だからこそ、自分がどう生きてきたかということを観客が自分自身に問い掛けてしまう。 何度みてもその時々の精神状態(あるいは年齢)によって映画の印象は変化するし、その時の自分というものを考えずにはいられなくなる。 もちろん北野武という人物の人生観がいたるところに練りこまれているのだろうけど、それは押し付けがましくなく、静かに潜伏している。

なにが正しくて、なにが間違っているのか。そんなことは問題にしていない。 ただ生きている、ただそれだけのことをこの映画は描いている。

そして見ている私たちも、ただ日々を生きている。 それだけである。 ただそれだけのことが、実は大切だったりする。

人生の終着点は自分ではどうすることもできないけれど、その気になればスタート地点だけは自分で設定できる。パワーさえあれば、何度でも人生はやり直すことができる。 「終わった」と思えば人生それまでだし、「まだ始まってない」と思えばそこからまた人生は始められる。

北野武、恐るべし。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)Myurakz[*]

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