[コメント] A.I.(2001/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
この作品にはいくつかの「ウリ」があります。 ある人にとってみれば「キューブリック」であり、ある人にとっては「スピルバーグ」であり、はたまた「完成度の高いCG」であり、或いは「愛」であり。 ハーレイくんを観に行った人もいれば、ジュード・ロウに期待を寄せた人もいるでしょう。
それらが混在しているが故にこの映画に対する評価は賛否両論となっており、人によって受け止め方もさまざまなんでしょう。
穿った見方をすれば、あえてそうすることで論争的な仕上がりにすることが観衆を劇場に呼び寄せる餌になっている、という「商業主義」も垣間見ることができるかもしれません。
いずれにしても、様々な要素がごった煮状態になっている中でこの映画を観た僕が感じたことは、「共感できない」というものでした。誰にも感情移入できない。「無償の愛」のハーレイくんに対してそれ以外のロボットたちはどこか欠点を抱えて生きて?いるんだけど、(実際には人間が演じてるにもかかわらず)描写が浅すぎる。
例えば、ジュード・ロウのセックスロボットがどれだけすごい技を持っているのか全然分からない、ということはさておき、ショーの舞台に集められるポンコツロボットたちは理由もわからず捕えられ、破壊されていく。かたや両親は人間が迷う生き物であるということのみを誇大に捉えている気がしてならない。本当の子供にしても、これだけ一方的に親の愛を占有しようとしている姿を見て、彼のことをどう思えというのか?2000年後の世界は、極々狭い空間しか登場しないためか、箱庭のような印象を受ける。メタリックな朝鮮人参みたいな未来のロボットたちのイメージもどうかと思うよ。あれに感情移入できる人はいないでしょう。彼らの存在が見えないうちに映画はあっという間に大団円に突入するため、「あれ、もう終わり?」といった趣。2000年の時間の経過があったとは思えないようなスカスカなところに着地してしまいました。
映像は部分的には見所があったような気がするが今ではこけおどしであった場面ばかりが思い出される。横を向いたらスカスカなのはそりゃ驚くけど、一度観れば充分だし、ジュード・ロウはなんだか罰ゲームで変なコスプレをやらされてヤケになっているような風情。 風景や街並みは日本のアニメの方がよっぽどすごい。MEMORIESの「大砲の街」を観よ、と言いたい。時間があったらでいいけど。
で、この映画が高く評価される理由があるとすれば、「愛」の素晴らしさについて改めて提案しているからだということだと思うんですよね。
でも、それがプログラムされたロボットによって描かれるというのは恐ろしいのを超えて空虚ですらある。しまいには、その愛を一旦手に入れながらやはり捨ててしまう母親の姿は、人間には尊厳などない、と言っているのに等しいのではないだろうか。それは、その愛がロボットのプログラムだったからなのだろうか。本当の子供の方がやっぱり可愛かったから?
う〜ん、どうにも納得できん。こういう小難しいことを考え始める前の年齢の時に観るべきじゃないでしょうか。
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