コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] キャメロット・ガーデンの少女(1997/米)

赤いリボンの中に輝くデヴォンの姿。すべては彼女の物語の中に
ミュージカラー★梨音令嬢

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







大人の中にいて一際輝くミーシャ・バートン。それは“大人の色気”ではなく、“成長過程の色気”。それは大人になってからの色気よりも、ずっと短くて一瞬しか持ち得ない。男女問わずどの子役も、この“一瞬”を捕らえられた映画に出ると、どんなベテラン俳優よりも美しく映えるものです(『リトル・ダンサー』のジェイミー・ベルetc)。

ベールの中にいるような映画。しかし、だからこそデヴォンの嫌悪する醜さが浮かび上がる。まだ彼女はアトランティスにいるのですね(『アトランティスのこころ』を見て以来、思春期の少年少女を総じてアトランティスにいると言ってしまう)。

傷を見せてはいけない、笑顔を作れ、高いグラスは使うな。これは自分達の住んでいる世界。しかし、彼女の目からは何と醜く見える事だろう。痩せた木を綺麗なリボンで飾る無意味な行為が何と優しく美しく見える事だろう。そんな彼女の目線に一番近い所にいたのがトレント。彼は傷を「クール」と言い、赤いリボンの靡く木の美しさに目を細める。彼は誰よりも人間らしい純粋さに溢れた人間だ。一見遠く思えるデヴォンとトレントが徐々にそういう純粋さを共鳴させ合う姿には感動さえ覚える

しかしあのトレントの実家の周りの風景が恐ろしく生き生きして見えたのが印象的。更にキャメロットの異常(正常?)さが引き立った

ミーシャもさる事ながら、サム・ロックウェルもかなり好演。自分の存在を誇示するように飛び込む姿、軽さの中に悲しみと純粋さを秘めた青年の姿をよく表現した

夢の中から一転、死を目の当たりにし、自らも死を与えるデヴォン。そんな彼女の最後の魔法は好きな人を救い、バビヤガを追い払った。思春期は誰でもあんな魔法を使える時期なのかもしれない。これからデヴォンもバビヤガの仲間入りをするのだろう、リボンの靡く木の中で、トレントと共に過ぎ行く“一瞬”を見送る彼女の最後の輝きは忘れられない。彼女が一体どんな大人になるか…推し量る事しかできないが、見守っていけたらなと思わせてくれた。アトランティスが沈んでも、また新たな輝きがデヴォンを包んでくれる事を祈っている

蛇足だが、その時再会した、デヴォンとトレントの姿も見てみたいななんて思ったりした 最後に…原題「芝刈り犬(直訳)」をこの邦題で包み込んだ日本の方々に珍しく拍手したい。お陰で良い作品に出会えました(苦笑

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)ことは[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。