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[コメント] SHINOBI(2005/日)

とにかく楽しい作品ですから、笑ってみられる環境があったら一見してみることをお薦めします。点数の低さは、むしろ楽しませてもらった分、敬意を表して。と受け取ってください。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 松竹110周年記念作品として大々的に宣伝されていた作品で、確かに山田風太郎の小説を実写で作り上げていたのは認めよう。

 山田風太郎の小説は私も好きだが、何故好きかというと、この人の描くのはたまらなく通俗性にあふれ、荒唐無稽な忍術合戦が楽しめるから。最近この人の小説を文学と称する人も多いようだが、本人はそれ絶対に喜ばないと思う。この人は子供から大人まで読む人間を楽しませようと夢をふくらませ続けた、パワフルな通俗小説家なのだから。いわば古いSF小説家と同じ。

 だからこの人の小説に文学性を求めてはいけないし、綺麗さもいらない。むしろ忍術合戦と殺陣に特化していれば充分。

 それに特撮ファンとしては、予告で流れた戦闘シーンなんかが結構映えていたのも面白いところだった。失敗だろうと何だろうとかまわない。とにかく観よう!と言う思いから。

 …いや、これは驚いた。『パール・ハーバー』(2001)並の超弩級作品を見せられるとは!パートパートの画面を除けば、ストーリー、設定、演出全てが無茶苦茶。これを正気で撮ったと思っただけで笑ってしまう。

 これまでの私だったら、ここまでの作品を見せられたら怒っていただろう。こんなとんでもないもの見せやがって!と。

 だが、そうはならなかった。むしろ心の中で大笑いしながら観ていた。

 思うに、私は昨年から映画の観方が少々変わったのだと思う。というか、一つのマインドコントロール用の呪文を覚えたと言っても良い。

 すなわちそれは、「『デビルマン』(2004)と較べればマシだ」というもの。そう。『デビルマン』を観る前と観た後では、価値観が一挙に変わってしまっていたのだ。  つまり、くだらないと断定した作品だったら、すぐに気持ちを客観的なものに切り替えて、頭の中で楽しくツッコミを入れることが出来るようになった。

 そう言う意味では、本作はもの凄く楽しかった。何せ分単位どころか秒単位でツッコミを入れられるのだから。

 だから物語そのものの評価には目を瞑り、久々にツッコミ部分を書いてみよう(真面目にレビュー書いてたら怒りたくなるから)。何せ秒単位のツッコミが可能な作品。書く気になれば、それこそ延々と書けるけど、その中でも一部を。

<まず言葉の問題。現代語と江戸時代の言葉がごっちゃになってるのはともかく、全てが標準語で語られるし、話し言葉だけでなく、書いてる言葉まで楷書体できっちりと観てる側が理解できるように出来ている(これは配慮と取られるかも知れないけど)。少なくとも「我々」とか言葉を使って欲しくなかったところではある。

 隠れ郷の描写だが、卍谷はともかく、鍔隠れの郷は凄い。河川敷どころかそれなりに水量のある川の横に郷がある。雨が降ったら即床上浸水決定!台風が来たらその度ごとに郷を作り直す必要あり…

 隠れ郷の割に、郷の人間が着ている服がみんなカラフルな上にまるで洗い立てのようにぱりっとしたものばかり。更に言わせてもらうと、みんな顔がまるで化粧をしたみたいにさっぱりしてる。

 お幻の葬儀は水葬のようだが、これは補陀楽浄土を目指して実際に行っていた地域はあるが、それは海とか大きな川とかでないと出来ない。あの程度の水量の川だったら、悪くすれば数十メートルで岸に激突。あれが郷での普通の埋葬だったら、鍔隠れの下流には白骨死体が延々とつながっていることだろう。

 幻之助の忍術は『サイボーグ009』に登場した加速装置みたいなもんだろうけど、この忍術は凄いよね。多分重力までねじ曲げることが出来るんだろう。落下速度まで速いんだもの。

 柳生一族による隠れ郷への攻撃。隠れ郷の人間は全く危機感がないのか、火矢が撃ち込まれる瞬間まで近寄っていたことに気づかなかった。異能者の集まりのはずだけど、よくこれで400年も保ったものだよな。しかも卍谷の何人かは変な予知能力があるのか、爆発が起こる前に吹っ飛んでるよ。

 幻之助と朧の決戦で、砂浜に残っていたのは幻之助の足跡だけ。演出としてはこれは良かったんだけど、駆け寄ってたはずなのに、まるで慎重に一歩一歩歩いていたような足跡しか残ってない。流石忍者だ。

 朧の決死の讒言を聞いて隠れ郷への攻撃を中止する家康。書状は一体どれだけの速さで郷まで届いたんだろう?攻撃が始まってすぐに中止の命令が入るわけだから、ファックス並みのスピードで届かせた訳だろ?何を使ったんだろう?

 そういえば幻之助の鷹は登場の度に大きさが変わってたし、幻之助と朧の逢い引きの場所はいつも川の流れが違っていた。ラストシーンでは清流に手を差し込んだ朧が立ち上がった途端、水は濁流のように流れていた。凄い川だ。>

 …と、まあ、思いつくまま。DVDをゆっくり観ながら脇でこれ書いてたら、一体どれだけツッコミが書けるか。それはそれでやってみたくもあるな。

(評価:★1)

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