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[コメント] 父ありき(1942/日)

この二人、あまりに純粋。これを懐かしく思うのではない生き方にもあこがれます。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 今ではもうなかなか見ることが出来なくなった父子の情がストレートに出された好作。戦争中というハンディキャップにありながら、しっかり小津監督らしさを前面に出して作り上げ、見事にヒット作となった作品である。

 本作は殆ど笠智衆と佐野周二という二人の男ばかりが出てきて、色気とか波乱な物語とは無縁の作品なのだが、なんだか本当に心にしみる。こんな純粋な物語でも、充分面白く出来るんだな。現代で観ると、どうしてもノスタルジーが入ることになるのだが、公開当時は、リアルタイムでこのような親子の情が感じられていた時代なので、更に身に迫ってきていたのだろうと思える。

 ちなみに本作が笠智衆の初主演作だが、当時なんと38歳と言うのは信じられないところでもある。見事な老け役ぶりだった。

 一貫して国策映画を撮ることを拒否してきた小津監督だったが、当時の日本の風俗を描くためには、どうしてもそれは避けて通ることは出来なかったらしく、戦争に行く息子を晴れ晴れしい目で見る父の姿などが描かれている。お陰で情報局が募集した「優秀国民映画シナリオ募集」にも入賞した。しかし、監督本人は相当複雑な気持ちだっただろう。

 本作のシナリオは既に5年前の1937年に完成していたというが、最初のシナリオだとなかなか松竹の了解が取れなかったのと、小津自身の出兵により、製作は大幅に遅れてしまったとのこと。

(評価:★4)

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