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[コメント] ナバロンの要塞(1961/米)

ナバロン砲こそがロマン。と言い切ってしまおう。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 第二時世界大戦を題材にしたアリステア=マクレーンによる冒険小説の映画化作で1961全米興行成績1位。本作の大成功が、これまで“格調高さ”というイメージで見られていたコロムビアがアクションも作れると言う事を示した転換点にもなった。

 無謀な作戦を知恵と勇気(そして偶然とちょっとしたお色気)で成功に導くと言った形式は本作によって確立されたとも言われる。特に男臭くなりがちなこの物語に女性を登場させて話を展開させるのは以降のハリウッドの定番へとなっている。

 その気合もあるのだろうか。とても豪華な作品に仕上げられている。

 キャラクタの豪華さは特筆すべきだろう。主役級キャラを次々に登場させると言う気合の入れようだが、本作の主役となったペックは、実は本作がハリウッドの復帰作(ペックはリベラル発言が災いし、本作に至るまでアメリカでは仕事が無かったのだという。そのお陰でヨーロッパでの活動が中心となっていた。『ローマの休日』(1953)に抜擢されたのはそのお陰)。60年代になってようやくハリウッドの赤狩り旋風が落ち着いたための起用だったが、復帰作でアクション俳優として帰ってきたのも面白いところ。インテリ然とした顔つきしているのも、逆に本作の役所にはよく合っている。そして彼をフォローするかのように、ニーヴンやクインと言った男臭さを強く意識させる人間を周囲に配し、共に銃弾をかいくぐった友情物語にまで昇華させる。6人の仲間それぞれにきちんと性格付けされているのも良い(確証は無いけど『七人の侍』(1954)に影響受けてるんじゃないかな?)。配役のバランスの良さも感じさせてくれる。

 物語も定番とはいえ、これが以降の定番を作っていったんだ。という目で見ると新鮮な思いで見られるし、緩急取り混ぜているので、飽きずに観ることが出来る。

 しかし、本作でやっぱり最高だと思うのは敵そのものが人間ではない点にこそあったのではないだろうか。目標とすべき、最後の敵はナバロン砲という感情を持ち合わせない鉄とギミックの固まりである。ちょっとフェティっぽい言い方だけど、巨大な機械の一部としてネジとギアが動くのって、それだけでロマンを感じてしまう。人間性が感じられぬ冷徹で巨大な機械こそ(あるいは一部の)男の憧れであり、同時にそれを壊す時の快感(日本のテレビ特撮作品とかでもそう言うフェティ部分は存分に発揮されているとはいえ、やはりこの巨大感はオモチャの比ではない)。本物の鉄の固まりがギ・ギ・ギとか音を立てて徐々に動いていくシーンはなんかゾクゾクとするし、このでかい機械が破壊される!それだけで最高である。しかも心憎いことに、壊れる壊れる…と思ったところでちゃんと一拍置いてくれるサービスぶり。特に後半の演出にかけては、まさに“快感”と言ってしまって良い。

 機会があったら劇場で観直したい作品の一本。ナバロン砲動くの観るだけだけでもさぞかし気持ちよかろうと思われる…

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)G31[*] 緑雨[*]

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