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[コメント] 青春残酷物語(1960/日)

大島渚って頭で考えた生き方を理想としていたんでしょうか?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 和製ヌーヴェル・ヴァーグ(とはいえ、元は日本から始まったんだが)にこだわりを持つ大島監督が世に問うた問題作で、60年安保闘争に明け暮れる時代を背景に、刹那的に生きていく若い二人を描いた衝撃作。

 これは不思議な作品だ。大島渚という人物は政治的には極めてリベラリストのはずなのだが、本作はむしろ全くその逆を描いており、何の理念も目的もない二人を延々と映していく。「俺たち自分を道具や売り物にして生きていくしかないんだ」は若者の共感を受けた。

 日仏のヌーヴェル・ヴァーグ好きな私から見るに、確かにこれは教科書的作品だと言えると思う。その辺は流石大島渚監督。それは楽しいのだが…

 若さを情熱と思う人は多いと思うし、当時の安保闘争は、まさにその若さの爆発の発露と見る人も多いだろう。しかし、大島監督が作り上げた本作はそう言うのとは全く無縁。登場人物たちにとって若さとは、今をしのいで生きていくと言う刹那的な思いだけで、周りを醒めた目で見やりつつ、しかし自縄自縛へと陥っていく、これも又青春の一面をみせた作品だった。表に出ているゲバ棒持ってわあわあ騒いでいる人間ばかりではない。表に出る気もなく、ただ生きていると言う人間はもっと多いわけだし、その中にはこのようになってしまう人間もいる。頭ではそれは分かっているのだが…

 問題はこの生き方に全く共感が出来ないと言うところだろう。世間に背を向けて自分の世界を作ろうとするのも良いんだが、「だったら働けよ」と言う一言で全て済んでしまいそう。主人公の二人は別段死を渇望しているわけでもなければ、いっぱしに世間に反抗しているわけでもない。更に言わせてもらうと世間ずれしているわけでもない。何となく昔の文士を気取っているだけのように思えるのだが、要するにそれって自分に酔ってるだけなんじゃないのか?なんか彼らの生き方は妙に苛々するんだよな。 

(評価:★3)

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