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[コメント] 鉄男 TETSUO(1989/日)

何か食べながらこの作品を観ることはお勧めしません。私はそれで半分以上食事を残すという貴重な体験をしました。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 塚本晋也監督の名前を内外に響き渡らせた怪作(むしろ国内より海外で受け入れられ、現在の活動の場はむしろ海外に移っている)。

 私にとっても本作品が塚本晋也初体験作品だが、これは色々な意味で“酔った”。

 カットバックの多用と、塚本監督の特徴とも言える画面せましと動き回る“線”の描写は観る者の平衡感覚を失わさせ、劇中で男が味わっている悪夢を同時に私まで味わった気がした。いや、ちょっと引いて観れば大丈夫なのだろうが、映像の世界に引き込まれていた私は完全に乗り物酔いしてしまった。

 本作品はビデオで観たのだが、普通のSFっぽい作品を期待し、食事しながら観ようと思って借りてきた。結局ビデオ観終わった時点で半分以上食事を残してしまった。こんな事は滅多にないんだが、鑑賞中、とてもじゃないが何か食べようと言う気にはなれなかった。大失敗だった。

 物語そのものは単純なのだが、一体“ヤツ”が何者なのか、何故こんな物語になってしまうのか、観客を完全に置いてけぼりにしまっている。それだけ監督が本当に好きなように撮ったと言うことだけはよく分かった。

 これを“映像美”と言うべきか、単なる“悪趣味”と言うべきか、それを判断するのは難しいが、この作品は間違いなく傑作であり、恐るべき才能を世に送り出した記念すべき作品だと言うことは確かだろう。

(評価:★4)

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