[コメント] ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生(2018/米)
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一応物語の骨子は単純である。ここで語られるのは、脱獄したグリンデルバルドが、クリーデンスという自覚のない魔法使いを使って何か良からぬ事を企んでるということを突き止めるだけ。実質的にほとんど物語は進んでない。
結構な時間を使っていながらストーリーが全然消化出来ないのだから、どうにもストレスが溜まる作品となってしまった。
これだけ時間がかかってしまう理由は、登場人物それぞれの闇を描こうとするからだが、抱え込む闇の部分を省略せずに描こうとした結果、そちらの描写に時間取られて肝心の物語が展開していかなかったというのがあるだろう。
前作から続いて主人公となったニュートは、前作では確かに軽い人間不信に陥った魔法使いといった感じだったが、その人間不信に至らしめた、そして今も彼を苦しめている家族の関係が出てくる。
別段家族から虐待を受けてるとか言うのではないのだが、魔法局につとめ、何かと世話を焼いてくれる兄のテセウスと折りが悪い。兄の婚約者であるリタに何らかの関係があるようなのだが、それは表面には出ず、ニュート以上に精神的に追い詰められたリタの方がおかしくなっていく。
そして前作で別れた魔法使いの姉妹クイニーとティナはそれぞれ現状に不満を持ち、クイニーはニュートの元でくだを巻き、やがて彼女も精神の均衡を崩していく。ティナは誤解が元でニュートから離れようとするのだが、いくら誤解が解けても頑なな心は変わらず。
そして前作で実は魔法使いの血を受け継いでいたことが分かったクリーデンス・ベアボーンの自分のルーツ探しも同時展開。意外な出自が明らかになるのだが、これまでの自分の世界が崩壊していくために精神的にどんどん不安定になっていく。
更に脱走したグリンデルバルド捕獲に際して何故か自分で手を出せないアルバス・ダンブルドアの真意を探るために、過去の過ちも描かれる。
過去に受けたトラウマや血の轍によるストレスの原因探しが物語の大半を埋めることになるのだが、その情報量が多すぎる。
上記の展開をすべて一本の映画に詰め込んだ結果はどうなるかと言えば、当然ながら物語は破綻する。
そして破綻した物語に何のフォローもなく、唐突に物語は終わってしまう。
思うにこの作品、映画ではなく小説で描くべきものだったと思う。少なくとも一度小説にしたものを徹底的に推敲して映画用にシェイプアップさせる必要があったと思われる。 脚本は「ハリー・ポッター」著者のローリングが当たっているが、小説家の脚本をそのまま映画にしたことから無理が生じたんだろうと思われる。
次作以降はもう少し物語をシェイプアップしてすっきりした物語を見せてもらいたいもんだ。
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