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[コメント] ピアノ・レッスン(1993/豪=ニュージーランド=仏)

好みでは無い。だけどとんでもなく質が高い。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 “愛とは何か?”というストレートな物語を前衛的に作り上げたニュージーランド映画。本作の成功によってニュージーランド映画は大きく変わったと言われている。

 物語は、簡単に言ってしまえば単なる不倫をテーマにしたものだが、非常に動きが少なく、台詞も抑え気味。その中で女性の心の動きに特化した物語は、確かにこれまでにはなかったタイプ。海外作品というよりも日本のATGっぽくもありのだが、とてもスマートに仕上がっている。

 又、本作は、二人の女性の心の動きを追った物語として観る事ができよう。もちろんその一人はエイダだが、もう一人重要な役割を果たす女性として、その娘のフローラがいる。この二人の心の対比が面白い。

 エイダの方は、実に単純。彼女にとって心の支えはピアノだったのだから、ピアノを与えてくれる者こそが自分の頼るべき人物となる。だから、ピアノに対して理解の無い夫ではなく、ピアノを与えるベインズに走るだけ。それに対して娘のフローラは、母だけが心の頼りだったが、その母が不倫に走ったとき、彼女について行こうとはしていない。自ら頼るべきものを切ってしまうのだ。だが子どもである身である自分は誰かに頼らねば生きていく事は出来ない。結果として彼女は頼れる存在を求め、揺れ動く事になる。この物語の一番の見所は、実はフローラの心の動きとも言える。

 …だからこそ、物語は極めて重いし、観ていてとてもきつい(家族が崩壊する物語は私には観ていてきつい)。正直、この部分は、分かれば分かるほど、好みからは離れていくのだが、そのきつさに目が離せなくなる。

(評価:★3)

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