[コメント] 怪獣総進撃(1968/日)
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怪獣ブームが下火となり、東宝が怪獣映画の総決算として投入した作品。だが幸いな事に本作の大ヒットにより路線は継承されることになる。後々まで怪獣島の設定は残され、ゴジラシリーズのメルクマール的な位置づけにある作品。
本作の初見は随分前のこと。見た目からあんまり期待できないと思っていたし、事実初見時点では全然面白いと思えなかった。11大怪獣とか言いつつ、実際に画面に登場するのはその一部だし、人間ドラマと怪獣の戦闘シーンは見事に乖離。キングギドラがいくら強いって言っても、集団リンチのような戦いにも引いた。正直な話、しばらく本作には最低点を付けていた。
ところが、最近になってこれ観直してみて、評価をかなり上げた。
怪獣と人間のドラマというものについて改めて考えてみたい。
前作『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』で福田純監督は人間と怪獣との交流について描いていたのだが、本作の人間と怪獣の関わりは恐ろしいほどに希薄。人間は完全に管理された怪獣をモニター越しに観ているだけで、人間側は独自にドラマを作っている。これが最初観た時悪い部分だとばかり思っていたのだが、実は全く逆ではないか?と言うのが今の考え。
本多監督は本作において、徹底して人間を描こうとしていたのではないか?怪獣を画面の向こうに押し込め、こちら側ではハードなドラマを展開する。向こう側を子供に分かるように、そしてこちら側では大人が興奮するように。
…これは実は卓見だったのでは?少なくともこの関わり方だと、幅広い世代にアピールができる。元々特撮映画を大人の作品として撮っていた本多監督は、福田純監督の子供向け路線を損なうことなく、立派に大人向け作品として本作を作り上げてくれていた。
確かにその点においてバランスが良かったとは言い難いが、人間側のこの緊迫したストーリーはどうだ。今観ても、地球規模の危機感は充分感じ取れるし、緊張感と熱で汗を流しながら地球を救おうとする人間側の努力は緊迫感溢れるじゃないか(特攻精神もあったし)。人の死というものに対しても正面切ってその重さを演出していた。その辺はやはり本多監督ならではだ。怪獣映画で必要なのは怪獣だけじゃない。人間をきっちり描くことが重要だ。と言うことを暗にほのめかしているようにも思える…考えすぎだろうか?
それに本作では、大分コミカルになったとは言え、久々に怪獣が“天災”として描かれてもいたし。
…このレビューを書いていて、ふとデジャヴュに襲われる。このパターンはどこかで…
あ、そうだ。これは怪獣版の『妖星ゴラス』なんだ。そう言えばこれも本多監督だったか。
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