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[コメント] フレンチ・コネクション2(1975/米)

ジーン=ハックマンの走ってるのを見るのは飽きない。ただ、気が付くと一緒になって疲れてる自分がいるような…
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 大ヒットを飛ばし、アカデミーでも数々の賞を引っさらった前回。そのラストの引きが、“黒幕に逃げられた”と言うものだったため、続編が作られるのは自然の成り行き。ただ、娯楽作品におけるリアリティのギリギリのせめぎ合いをいとも簡単に無視することにもなってしまったと言う事実はいかんともしがたい。

 それでも堅実な映画作りをする(時々おかしなのも作るけど)フランケンハイマー監督だけに、映画作りとしてはきっちりと作っているし、何よりフランス人がフランス語を話すという当たり前の事実を自然に見せてくれたのは嬉しいところ。

 前回と較べ、ホーム・グラウンドでないためか、ハックマンが今ひとつ窮屈そうに見えるのだが、今回も良く走るし、汚れるし、地道な張り込みもする。続編としては充分すぎる出来だし、単体で観ても質は高いと思う。時間が経過した分、レイがかなり老け顔になってるが、それもリアリティの内かな。徐々にだらしなく、そして無気力になっていくというヘロイン中毒になる過程を見せるハックマンの演技も良い(後半立ち直ったが、これでフラッシュ・バックが起こる描写があったらなお良かった)。

 この『フレンチ・コネクション』シリーズにおけるハックマンの魅力と言うのは、やはり多くの人が言うように、“走る”事ではないかと思う。彼の走ってる姿は、それが長くても冗長とは見えないのだが、それは走っているときの彼の表情が実に良いからと思う。最初から最後まで必死な表情をしているのは当然としても、走っている内に徐々に表情が苦しそうになる。終わりくらいになると顔をゆがめ、いかにも息が切れて苦しそうに、それでも何とか犯人を追いつめようと必死で走っている。それを見ているだけで飽きない。この辺、今の映画ももう少し見習ってほしいものだ。生身の人間が走るんだったら、当然この位疲れてくれないと。

 ところで、全く関係は無いのだが、これを見ていると思い出す漫画がある。士郎正宗の『アップル・シード』が実はそうなのだが、意外な取り合わせとは思っていない。著者はSF漫画家として見られてばかりいるが、漫画の雰囲気自体はむしろ昔からの刑事物(特にリアリズムの強い作品)からの影響を強く感じる。多分、どれほど近代化が進んだ時代にあっても、警察は“走って”犯人を追いかけるもので、漫画の中で展開するその肉体の動きがそう見せるのだろう(著者自身がわざと強調している可能性もあり)。今度テレビで『攻殻機動隊』が始まるそうだが、SFを強調するのではなく、むしろこの『フレンチ・コネクション』のような精神を活かした作品作りになることを期待したい。

(評価:★4)

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