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[コメント] チャンス(1979/米)

名作なんでしょうけど、拒絶感ばかり覚えてしまって…
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 “顔のない男”の異名を持つセラーズの晩年の傑作とされ、後年セラーズの伝記映画『ライフ・イズ・コメディ』でも締めとして本作が使用されていたため、かなり知名度と人気が高いことがうかがえる。

 ただ、それで私はどうか?と言われると結構微妙なものがある。実は本作は2回観ているのだが、そのどちらも実は大して心に響かなかったところが痛い。確かにセラーズの巧さは突出したものがあるし、セラーズファンとしては拍手を送るのに吝かではないのだが、物語の単調さと「いかにも」な物語展開はどうにもはまり込めず。

 別段テンポが悪いのがどうと言うつもりはないのだが、なんか世間知らずを「絶対善」のようにしてしまい、あがめ奉るというのは、なんか心情的に共感できないし、政治の世界をまるで鏡越しの別世界のようにしてしまうのは、物語性を放棄しているかのよう。せめて実際の政治の世界のドロドロの部分を言葉でなく実際に見せて欲しかった。それらの暗喩であればアルトマンあたりだったら上手いのだが、アシュビー監督には荷が勝ちすぎたのだろうか?それともあくまでファンタジーと割り切った?いずれにせよ私には中途半端に見える。皮肉なのに毒気が無いのが難点だったか。

 それと、ここでのマクレーンの壊れっぷりが激しすぎて、拒絶感しか持てなかったのも痛かったな。色々なところで拒絶感を持ってしまった。

 ところで本作はラストシーンでチャンスが水の上を歩くという不思議なシーンがある。本作を評価する人はこのシーンだけは駄目。という人が多いのだが、むしろ私はこのシーンで妙に救われたような気がした。あるいは『素晴らしき哉人生』とは逆ケースで、意地悪な天使が人間の世界を笑いに来たのか?というどんでん返し的な意味合いを持つ。と考えたら、その時にようやく笑いが出た。あるいは考え過ぎなのかな?

(評価:★3)

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